ニュース Customer News 「その場観察分光法による自動車触媒の反応機構解明」名古屋大学 薩摩篤 教授

「その場観察分光法による自動車触媒の反応機構解明」名古屋大学 薩摩篤 教授

2021年5月21日

名古屋大学大学院工学研究科 薩摩篤教授が「その場観察分光法による自動車触媒の反応機構解明」の研究により、2020年度触媒学会学会賞(学術部門)を受賞されました。この賞は触媒に関する貴重な学術的研究をなされた方に触媒学会より授与されています。

本研究において評価された点は、触媒反応場における赤外スペクトル、紫外可視スペクトル観察に基づいたディーゼル排気ガス脱硝触媒や白金族フリーの自動車三元触媒の反応機構解明とそれに基づく触媒開発です。主な業績の一つである担持銀触媒上での銀クラスター形成の発見には、日本分光株式会社と共同で開発した UV-vis 用真空加熱拡散反射測定装置が決定的な役割を果たしました。

ディーゼル脱硝反応条件下で測定されたAg/Al2O3のUV-Visスペクトル

先生のご紹介

薩摩 篤 先生
薩摩 篤 先生

名古屋大学大学院工学研究科応用物質化学専攻 教授
* 所属は論文掲載当時
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先生からのコメント

以前は「絨毯爆撃」と言われた固体触媒の開発ですが、様々な分析装置の発展により、反応メカニズムを理解した上での触媒の開発や改良が可能になってきました。赤外スペクトルを用いた「その場観察」は最もポピュラーな手法の一つですが、日本分光様とのご相談の中で紫外可視スペクトルにも応用してみようとの話が持ち上がり、真空加熱拡散反射測定装置を開発していただきました。反応条件により活性が大きく変化する銀触媒に適用したところ、水素共存下で脱硝活性が飛躍的に増大する理由の一つが、銀クラスターの形成であることを示すことが出来ました。ちょうど、ナノ粒子、金属クラスターの触媒作用が注目されていた時期であり、実用的な反応条件下における金属クラスターの触媒作用は、その後欧州の研究グループとの論文上での論争を引き起こすインパクトのある成果となりました。我々のわがままな注文にも、的確にご対応いただいた貴社に心より感謝しております。

使用された装置の概要

真空加熱拡散反射装置 VHR-764 は、加熱ユニットと積分球ユニットから構成されています。一般的に不均一で不透明な固体試料や粉体試料の測定には積分球を用いますが、試料を高温にしたい場合などは分光光度計から離した位置に試料室を設けます。これは温度の影響を受けないようにするためで、本装置は光を光ファイバーで取り出すことにより外部に設置した測定対象に分光した光を照射し、拡散反射測定することができます。加熱ユニットは試料の加熱はもちろん吸着能を検討するガスを流すことや、吸着したガスを除去するための真空排気等が可能となっています。
閉鎖循環装置と組み合わせて作動させることにより、一定ガス量を一定時間連続して試料表面に供給でき、その時の表面状態をリアルタイムでモニターすることができます。