磁場内におかれた物質の中を直線偏光が磁場の向きと平行に通過するとき、偏光面の回転が起こります。この現象は発見者にちなんでファラデー効果と呼ばれていますが、磁場によって誘起された光学活性と解釈することができます。
ファラデー効果の観測は通常の光学活性物質の場合と同じく ORD および CD で行われますが、磁場によって誘起された現象であるためにそれぞれ磁気旋光分散(MORD)、磁気円二色性(MCD)と呼ばれています。MORD, MCD ともに ORD,CD 装置の試料室にマグネットをセットして測定することができますが、現在では測定が容易で高感度な MCD が一般的に測定されています。
従来、1 テスラを超えるような強い磁場をかける場合、大型の電磁石を使用する必要がありました。電磁石には磁場強度を変えながら測定することができる利点があるものの、60kg を超える重量のため簡単に試料室にセットすることが出来ませんでした。PM-491 型 1.6T 小型永久磁石では 1.6 テスラもの強力な磁場をかけることが出来ます。そのため低濃度サンプルなどの微弱な MCD 信号も観測することができます。また、手で持ち運び可能ですので、試料室へのセットも非常に簡単です。磁場の向きは試料室へのセットの向きを逆にするだけで変えることができます。
MCD は原理的には全ての物質で観測される現象です。通常の CD スペクトルが分子の立体配置や立体配座に関する情報を与えるのに対し、MCD スペクトルからは電子状態に関する情報が得られます。
ここではネオジムガラス、チトクロム C、塩化コバルト(II)6 水和物の MCD 測定例を紹介します。