近年、抗体医薬品の開発・製造・上市が盛んに行われています。抗体医薬品は、抗体と同様に目的細胞に発現した抗原のみを標的とする高い特異性を示すことから、悪性腫瘍やアンメット・メディカル・ニーズに対する治療薬として期待されています。
抗体医薬品をはじめとする生物医薬品に対してICH Q5E では製造工程変更前後での高次構造(HOS) の同等性/同質性を評価することが規定されています。円二色性 (CD) 分光法は抗体の二次構造および三次構造の情報を簡便に取得できるため、抗体医薬品の品質評価に幅広く利用されています。
現在では、イノベーターと呼ばれる先行抗体医薬品と共に、イノベーターと同じアミノ酸配列を有しながら、異なる発現細胞を利用して作製されたバイオシミラーと呼ばれる抗体医薬品も数多く利用され始めています。バイオシミラーの開発・上市の加速に伴い、イノベーターとバイオシミラーの HOS の比較法に注目が集まっており、FDA や EMA など世界各国でガイダンスが発行されています。これらのガイダンスではイノベーターおよびバイオシミラーの HOS の同一性を異なる測定原理からなる複数の手法を用いて評価すること (Orthogonal assessment) が言及されており、一つの重要品質特性に対して複数の分析機器を用いた測定の重要性が増しています。
J-1500 円二色性分散計は、FMO-522 蛍光モノクロメーターおよび FDT-538 蛍光検出器を組み合わせることで、近紫外CD スペクトルと同じく三次構造の情報を反映する蛍光スペクトルを測定できるため、容易に Orthogonal assessment を行うことができます。本アプリケーションデータでは、標的および製剤化の条件が異なる抗体医薬品である Herceptin® およびMabThera® /Rituxan® をサンプルとして、近紫外CD/蛍光スペクトル測定によるOrthogonal assessment を実施した結果を報告します。