円二色性分散計と BeStSel プログラムを組み合わせることで、迅速かつ簡便にアミロイド線維の形成に対する阻害剤の効果を評価することができます。
アミロイドβペプチドが凝集すると、主に平行型 β-strand 構造を持つアミロイド線維を形成します。この線維の蓄積は、アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD)など神経変性疾患の原因になると考えられています1)。そのため、アミロイド線維の形成を阻害する薬剤の開発が注目されています。アミロイド線維の形成を評価する一般的な手法として、蛍光標識剤を用いた方法が知られています2,3)。しかし、本方法を用いた場合、蛍光標識剤がアミロイド線維の形成や阻害剤の作用に影響を与えることが懸念されます。
一方、円偏光二色性(CD)分光法は、蛍光標識を必要とせず、溶液中のペプチドやタンパク質の高次構造(HOS)を迅速かつ簡便に評価できる手法として知られています。従って、アミロイドβペプチドの CD スペクトルを測定することで、HOS の変化やアミロイド線維の形成をモニタリングすることが可能であり、効果的な治療薬および予防薬の開発において有効な手法となり得ます。ここでは、CD 分光法と、高精度かつ詳細な二次構造解析が可能な BeStSel プログラム*を組み合わせることで、3種のイオン液体のアミロイド線維形成に対する阻害剤としての効果を評価した結果を報告します。
* JASCO Spectra Manager 2.5 BeStSel プログラムは、ELTE の József Kardos 博士、András Micsonai 博士と日本分光の共同で開発されました。