FRETとは、励起状態の供与体から、近傍の受容体にエネルギーが無放射遷移する現象です。FRETはIUPACの推奨により、フェルスター共鳴エネルギー移動(Förster resonanceenergy Transfer)の略語とされていますが、供与体として蛍光物質を使用することが多いため、一般的に蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence resonance energy transfer)の略語として知られています。FRETは供与体と受容体との距離が約1~10nmに接近すると起こるため、同じナノメートルサイズであるタンパク質に供与体と受容体を結合させてFRETを観測することで、タンパク質の構造変化や、特定のタンパク質間の結合を観測することができます。
ここでは、爆薬であるトリニトロトルエンと複合体を形成するマウス抗TNTモノクローナル抗体をバイオセンサーとして用い、この抗体を供与体、様々な芳香族ニトロ化合物を受容体としてFRETを観測することで、マウス抗TNTモノクローナル抗体の芳香族ニトロ化合物に対する感受性を評価した例を紹介します。