技術情報 アプリケーション Application Data 050-QU-0232
FTIR Application Data

液体セルを用いた極低濃度トランス脂肪酸の迅速な定量分析

Introduction

健康への影響が懸念されている食品中のトランス脂肪酸の迅速定量法として、FTIRと加熱ATR付属品を組み合わせた手法が提案されてきました。加熱ATR付属品を用いた手法は、GC(ガスクロマトグラフィー)と比べて前処理が不要な上、1~2分程度と極めて迅速な分析ができることからAOACやAOCSの公定法にも指定されています。しかしながら、AOCS(アメリカ油化学会)の公定法には、ATR法の定量下限が1.0%程度と記載されており、我々が提唱したFT/IR Application data(050-AT-0215)においても、公定法の条件で測定した場合にはこの定量下限が実証されています。一方、日本の消費者庁が2011年2月に発表した「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」では、食品100g(清涼飲料水等は100mL)当たりトランス脂肪酸含有量が0.3g未満の場合は、ゼロ表示を行ってよいとされています。言い換えれば、0.3%の定量下限が要求されていることになります。更に、諸外国においても同様のニーズがあり(例えば、アメリカ:1食あたり0.5g未満、台湾:100gあたり0.3g未満、韓国・南米各国:1食あたり0.2g未満など)、食品中の1.0%未満のトランス脂肪酸についても迅速かつ高精度に定量する手法が必要とされています。消費者庁の「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」によると、トランス脂肪酸の定量にはGC(AOCS Ce1h-05又はAOAC996.06)を用いるか「他の分析方法を用いる場合には、これらと同等の性能を有する分析方法で行う」と記載されています。GCを用いる分析手法は、抽出した油脂をBF3等を用いてメチル化し分離した後に分析を行う必要があることに加えて測定時間も1時間以上かかるという問題があります。そこで、前処理が不要で数分での測定が可能なFTIRの透過法を利用し、1.0%以下のトランス脂肪酸の定量を試みました。この結果、GCと同等の定量が極めて短時間で行えることが分かりましたのでご報告いたします。

Keywords
透過法、液体固定セル、定量、食品
アプリケーションデータ番号
050-QU-0232
発行
2010年