赤外分光法におけるATR法は、試料の前処理が不要で簡単に測定できることから幅広く用いられています。通常のATR測定では試料とプリズムを手動の試料押さえを利用して密着させます。一般的な試料押さえは、プリズムの破損を防ぐために試料にかかる圧力を制限する機構が組み込まれています。一方、今回紹介するオートコンタクトATRは電動式の試料押さえを採用しているため、プリズム破損防止の圧力制御機構だけでなく、試料密着時の圧力を段階的に設定することが可能です。加えて、試料を毎回同じ密着圧力で測定できることから、誰もが簡便かつ迅速に再現性の良いスペクトルを測定できます。ここでは、オートコンタクトATRの概要を示すとともに、密着時の圧力を段階的に設定した測定事例ならびにオートコンタクトATRを利用した受入検査を想定した事例について紹介します。
オートコンタクトATRは、試料押さえ部の昇降を自動化するとともに内蔵の圧力センサーにより、常に圧力をモニターしながら試料にかかる圧力を制御する新しいタイプのATRです。パラメーターを設定することで、試料密着→測定→試料押さえ上昇といった測定の一連の操作がボタン一つで行えます。このため、ルーチン的に類似の試料を多数測定する場合の操作負荷が軽減されることが期待されます。