技術情報 アプリケーション Application Data 170-TR-0219
FTIR Application Data

ポータブルFTIR(VIR-F)を用いたテラヘルツ測定システム

Introduction

光と電波の境界線である遠赤外領域は、近年“テラヘルツ領域”と呼ばれています。遠赤外領域の光は、無機物など重い原子間の振動モードや結晶の格子振動、分子の回転モードが測定できます。このため、薬剤の結晶多形や半導体デバイスなどの材料評価、無機顔料を含む考古学研究などに利用されています。また、この領域の光は透過性が高くプラスチックや紙を透過する性質があるため、郵便物などに隠匿された違法薬物や爆発物の非破壊検査などセキュリティ分野へも応用されています。この領域を測定する分光システムは、干渉分光システムを用いた赤外分光法(FTIR)とフェムト秒レーザを用いたテラヘルツ時間領域法(THz-TDS)に大別されます。THz-TDSの測定領域は約200cm−1(約6THz)以下であるのに対し、FTIRは680cm−1(約20THz)以下の広帯域測定が可能です。さらにFTIRはエミッション測定にも対応できるため大気などの環境計測や天体観測、遠赤外領域の光源開発にも応用できます。

遠赤外分光システムはベンチタイプの大型システムが一般的ですが、ポータブルFTIRのVIR-Fは小さな筐体内に光源、干渉計、検出器を集約し、現場で迅速にサンプルの測定や分析が可能な遠赤外専用システムです。このシステムは、1. 小型で軽量、2. 反射・透過測定に対応、3. 光学系を真空状態に維持してサンプルの交換が可能などの特長を有します。反射測定では金属板上の膜や半導体材料の光学定数を決定することも可能です。さらに試料設置部以外の装置全体を真空排気できるため、真空状態を維持しながら複数サンプルを交換して迅速に測定できます。近年、テラヘルツ領域の注目により数千件のデータベースを一般に公開している研究機関もあります。これらのデータベースには無機顔料の遠赤外スペクトルも含まれ、歴史的文化財の研究にも役立てられています。今回は近代に使用されていた代表的な顔料成分であるベンガラ(赤色)、ラピスラズリ(青色)、孔雀石(緑色)、カオリン(白色)、炭酸カルシウム(白色)など、各種鉱物をVIR-Fによって測定した事例をご紹介いたします。

Keywords
遠赤外、テラヘルツ、真空、無機、エミッション
アプリケーションデータ番号
170-TR-0219
発行
2010年