VHH 抗体は、抗原への高い親和性、安定性、生産性、加工性を備えており、次世代の創薬モダリティとして非常に注目されています。抗体医薬品は保存環境によって構造が変化し、その活性を失う可能性があるため、品質を保つためには構造の安定性を評価することが不可欠です。一般的に抗体医薬品は冷蔵又は冷凍状態で保存されますが、温度の変化や凍結・解凍の繰り返しで変性する可能性があるため、その構造の安定性を評価する必要があります。
タンパク質の構造を評価可能な装置の一つに、フーリエ変換赤外分光光度計 (FTIR) が知られています。FTIR では、α-Helix とβ-Sheet を中心とするタンパク質の二次構造解析 (SSE) を、短時間で簡便に行えます。ここでは、FTIR を用いて、新型コロナウィルス (SARS-CoV-2) に結合する VHH 抗体の、冷却過程ならびに凍結・解凍の繰り返しによる二次構造の変化を評価した結果を報告します。