技術情報 アプリケーション Application Data 260-PO-0224
FTIR Application Data

FVS-6000による振動円二色性(VCD)スペクトルの測定

Introduction

キラル化合物はその絶対立体配置により生理活性が異なることが知られています。身近な例として、L-グルタミン酸はうまみを感じるのに対しD-グルタミン酸は苦みを感じ、サリドマイドのR体は鎮静作用があるのに対し、S体は催奇性を有することなどが知られています。また、次世代の機能性分子の開発においてキラル化合物の機能性研究が盛んに行われています。このようにキラル化合物の研究は天然物、医薬品、機能性分子などを中心に多岐に渡っており、その中の重要な課題にキラル化合物の構造解析が挙げられます。キラル化合物の構造解析として、X線回折法、核磁気共鳴分析法(NMR)、紫外可視光を用いた電子円二色性分光法(ECD)などが利用されています。今回は赤外光を用いた振動円二色性分光法(VCD)を利用したキラル分子の測定事例について紹介します。

VCDは左廻りと右廻りの赤外円偏光の吸収強度の差を測定する手法です。VCDの特長は、赤外分光法と同様にほとんど全ての有機化合物が適用できることです。また、VCDによる測定結果と分子軌道計算による計算結果とを比較することで、試料の絶対立体配置を決定することができます。しかしながらVCDスペクトルのピーク強度は通常の赤外分光法に比べ1000~10000倍程度弱いため、高感度かつベースライン変動の小さい安定した装置が必要となります。FVS-6000は、高感度検出器、光学フィルタ、恒温PEMなどを搭載することで微弱なVCDスペクトルのピークを的確に測定できます。ここではFVS-6000を用い、代表的な各種キラル化合物ならびにモデルタンパク質としてヘモグロビンを測定し、良好な結果が得られましたので報告します。

Keywords
キラル、絶対立体配置、VCD、ピネン、1,1’-ビ-2-ナフトール、プロリン、ヘモグロビン
アプリケーションデータ番号
260-PO-0224
発行
2011年