技術情報 アプリケーション Application Data 260-TR-0216
FTIR Application Data

MAIRS自動測定ユニットAM-4000を用いた分子配向情報の取得

Introduction

京都大学の長谷川健先生が開発したMAIRS(Multiple-Angle Incidence Resolution Spectrometry; 多角入射分解分光法)は、分子配向の新しい解析手法として液晶や有機デバイス、繊維などの各種業界から非常に注目されています。従来、赤外分光法で入射光に対し垂直な面内方向・入射光と平行な面外方向に対する分子の配向性を解析するには、透過測定とRAS測定を併用する方法が用いられてきました。しかし、この方法はRAS測定に必要な金属基板が分子構造に影響を与え、適用できない試料がありました。さらに、透過測定用に非金属の基板が別に必要でした。これに対しMAIRSは、複数の入射角度での透過測定により分子配向を解析する手法であるため、必要な基板は非金属の透過測定用1種類のみです。通常、試料基板に対し垂直方向から光を入射する透過測定では、面内方向の振動スペクトルのみが得られます。一方、試料基板に対して入射角度を変えて透過測定を行うと、スペクトルは面内方向の振動と面外方向の振動、ノイズ等の線形非応答成分の足し合わせで表現できます。MAIRS測定では、面内振動と面外振動の割合を表現した回帰行列(r面内・r面外)を用いることで各入射角でのシングルビームスペクトル(s測定)から面内・面外振動成分のみを抜き出し、面内方向だけでなく面外方向に配向した分子の振動スペクトル(s面内・s面外、以下では面内および面外スペクトルとする)を同時に得ることができます。MAIRSは入射角ごとの微小なピークの変化を解析する必要があることから、高精度な測定が要求されます。MAIRS自動測定ユニットAM-4000は日本分光独自の補償板ステージを標準搭載しているほか、全真空FTIR(FT/IR-6000FVシリーズ)にも対応しており、質の高いスペクトルを得ることができます。今回、MAIRS自動測定ユニットAM-4000を用いてLB(Langmuir-Blodgett)膜の分子の配向性の解析を行いましたのでご報告いたします。

Keywords
MAIRS、配向、薄膜、角度可変、面内スペクトル、面外スペクトル
アプリケーションデータ番号
260-TR-0216
発行
2011年