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SEC による抗体医薬品中の凝集体の評価

Introduction

1986年に最初のモノクローナル抗体が、アメリカ食品医薬品局(FDA:U.S. Food and Drug Administration)に承認されてから、抗体医薬品の市場は急激に拡大し、これまでの約 25 年の間で様々な疾患の治療法として主流になってきています。抗体医薬品のようなバイオ医薬品の製剤開発では、その有効性および安全性を保証するため、適切な範囲内にあるべき物理化学的、化学的、生物学的または微生物学的特性を評価する必要があります。これらの特性は重要品質特性(CQAs:Critical Quality Attributes)と呼ばれ、各種分析法により解析されています。

また、抗体医薬品は、製造時の各工程での機械的なストレスや、輸送および保管中の環境的な要因などにより、二量体、三量体や凝集体を形成する場合があります。凝集体は、薬効の低下や副作用を引き起こす可能性があるため、CQAs の項目の一つとして評価が必要です。2014 年には FDA より、治療用タンパク質製品の免疫原性(医薬品が抗原として作用し、体内で抗薬物抗体が産生され免疫応答を引き起こす能力)の評価についてのガイダンスが出され、バイオ医薬品に含まれるタンパク質凝集体に対して、測定原理が異なる複数の手法を用いて、結果の比較を行いながら、各分析結果の妥当性を判断すること(Orthogonal Assessment)が推奨されています。

また、先行のバイオ医薬品(イノベーター)に対して、後続品(バイオシミラー)が同等同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品であることを示すために、物理化学的特性の評価が重要視されています。物理化学的特性の中でも高次構造(HOS:Higher Order Structure)は、特性評価において不可欠な要素となっており、適切な分析手法を用いて一次~三次構造および凝集体を含む四次構造の類似性を評価する必要があり、ここでも一つの特性に対して Orthogonal Assessment により評価することが推奨されています。

凝集体は、そのサイズにより < 100 nm、100 nm − 1 µm、1 µm − 100 µm、100 µm < に分類され、各サイズに応じた分析法が利用されています。50 nm 以下の凝集体の定性・定量評価の手法の一つとして、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)が多用されています。

今回は、SEC により、ヒト血清由来 IgG と、IgG 由来の配列を持つ非ホジキンリンパ腫の治療薬であるリツキシマブのイノベーター(MabThera®)とバイオシミラー(RIABNITM)、および乳癌の治療薬であるトラスツズマブのイノベーター(Herceptin®)を測定し、単量体、多量体、および凝集体の分離検出を行いましたので紹介します。

Keywords
バイオ医薬品、抗体医薬品、CQA、HOS、凝集体、MabThera®、RIABNITM、Herceptin®、TSKgel G3000SWXL、SEC、UV 検出器
アプリケーションデータ番号
747021G
発行
2022年
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