古より人々がどのような成分を顔料として用いていたのかを分析することは、考古学、美術史の研究、美術品の修復などを行う上で非常に重要とされています。特に遺跡や美術品に使われる顔料の定性分析を非破壊でできるラマ ン分光法は、赤外分光法に比べ測定領域が広いことから、有機顔料のみならず、400 cm-1 以下の低波数側にもピークが現れる無機顔料に対しても有効です1)。一般的に顔料のように色を呈する材料は蛍光を出しやすくラマンスペクトルの取得が困難であると考えられていますが、可視領域において鋭い吸収スペクトルを示すため、励起波長を大きく変えることなく、吸収帯を外すことにより、蛍光を回避する効果が期待できます。今回はモデル顔料として市販の水性絵具12色を3波長のレーザーで励起し、比較考察を行いました。