ラマン分光法を用いることで、炭素材料の定性だけでなく応力解析も行うことができます。
ラマン分光法は、レーザーを照射してその散乱光を検出することで、試料の分子振動や格子振動に関する情報を非破壊かつ非接触で取得できる優れた分析手法です。測定対象は有機物・無機物、結晶・アモルファスを問わず、ほとんどの一般的な物質の定性・定量分析が可能です。中でも特筆されるものとして、グラファイトやダイヤモンドといった炭素材料の識別および物性評価を行えることが挙げられます。一般的な分析手法のうち、赤外分光法では多くの炭素材料のスペクトルには目立ったピークがなく分析が困難であり、X線回折法ではアモルファス試料においてシャープなピークが得られず詳細な構造評価を行うには限界があります。また、元素分析では炭素原子が存在することは明らかにできても、同素体の識別は行えません。一方、ラマン分光法は、他の手法では分析が困難な炭素材料の識別や物性評価を行うことができますa,b)。異なる炭素材料の場合、スペクトル形状が大きく異なるラマンスペクトルが得られます。
ここでは、炭素材料の一つである炭素繊維について、異なる種類や異なる引張試験条件ごとにラマンスペクトルを測定し、応力のモニターを行った事例1)について紹介します。ここで紹介する内容は、物質・材料研究機構 構造材料研究センター 材料創製分野 高分子系複合材料グループ 内藤 公喜先生のグループが実施したものです。
