微量成分の高感度な検出が可能です。
表面増強ラマン散乱 (Surface Enhanced Raman Scattering, SERS) とは、金や銀などの金属ナノ粒子の表面に分子が吸着することで、ラマン散乱の強度が著しく増強される現象です1)。
ラマン分光法は、気体、液体、固体を問わず多様な状態の試料の定性分析が可能な分析手法として広く利用されていますが、極めて微弱な散乱光を検出する手法であるため、特に低濃度溶液の測定においては感度不足が懸念されます。これに対して、SERSを活用することで、通常のラマン測定では検出が難しい微量の成分や特定の分子の振動モードを高感度で検出し、解析できる可能性があります2)。
ここでは、一般的なラマン測定 (以下では非SERS条件と呼びます) では検出の難しい数mol/m3の微量なビタミンを含む3種類の栄養ドリンク (A、B、C) を非SERS、SERSの2つの条件で測定し、それぞれの結果を比較しました。 SERS測定には表面に金属ナノ粒子がコートされたSERS基板を使用しました。
1) 濵口宏夫, 岩田耕一: “ラマン分光法”, p. 23 (2015), (講談社サイエンティフィク)
2) 株式会社技術情報協会編: “ラマン分光スペクトルデータ解析事例集”,第1 版,pp. 53-60, 334-339 (2022),(株式会社技術情報協会編)