ラマン分光法は、カーボン材料評価に広く用いられており、単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分析においても、有用な知見を得ることができます。単層カーボンナノチューブは、螺旋度およびチューブ半径に対応して、電子構造が異なり、金属的および半導体的な性質を示します。したがって、その電子遷移に対応するエネルギーで励起することにより(共鳴ラマン散乱)、螺旋度およびチューブ径に関する知見を得ることができます。ラマンスペクトルには、3 つの特長的なバンドが観測されます。1600 cm-1 付近に観測される G-band は、グラファイト起因の振動モードに対応します。金属 SWNT では、G-band の低波数域に BWF(Breit-Wigner-Fano)型のスペクトルが観測されます。D-band は、欠陥に起因するバンドで、結晶性の評価に用いられます。また、低波数域に観測されるバンドは、RBM(Radial Breathing Mode)と呼ばれるナノチューブが直径方向に伸縮するモードで、そのピーク位置は、チューブの直径に反比例します。関係式によりピーク位置から直径を見積もることができます。