極低波数領域も含めたラマン分光法を用いることでアモルファス物質の分析ができます。
ラマン分光法は、試料にレーザーを照射してその散乱光を検出することで、分子振動の情報を非破壊かつ非接触で取得できる優れた分析手法です。また、赤外分光法(IR)と比較すると、重い原子で構成されている分子や結晶状態に関する情報が容易に得られるため、無機物の分析にも広く用いられていますa),1)。ラマン分光法では、結晶性の高い試料で強い信号が得られることが多いことから、結晶性の無機物分析で広く活用される一方で、アモルファス(非晶質)の無機物では測定事例が限定的でした。アモルファスの固体のスペクトルに特徴的に現れる情報の一つにボソンピークがありますb),1)。ボソンピークは、比容(密度の逆数)の増大に伴ってピーク位置が低波数側にシフトする2)ことが知られています。このため、ボソンピークを検出することで、分子振動に関する情報に加えて、単位体積当たりの原子の詰まり具合を分析することができます。
ボソンピークは一般に 60 cm-1 以下の極低波数領域に現れるため、検出にはこの領域の測定が必要です。ここでは、10 cm-1 までの測定に対応した極低波数測定ユニットを使用し、ガラス質(アモルファス)の天然岩石である黒曜石や松脂岩について、ボソンピークや微量に含まれる物質の分析を行った事例を報告します。
黒曜石は火山岩の一種で、マグマが結晶化する前に固結したガラス質の天然岩石です。水分の多いものは松脂岩と呼ばれ区別されます。これらの岩石は、石器時代には武器や刃物、宝飾品として高い価値を持っており、産地から全国各地に広く流通していました。このため、火山研究などの地球科学の観点だけでなく、考古学分野における産地推定や流通経路の解明といった観点からも注目されています。しかし、いずれの黒曜石も主成分は SiO2 であるため、標準的な波数領域のラマンスペクトルでは産地間の違いは明瞭ではなく、これまでラマン分光法の使用は限定的でした。
黒曜石は火山岩の一種で、マグマが結晶化する前に固結したガラス質の天然岩石です。水分の多いものは松脂岩と呼ばれ区別されます。これらの岩石は、石器時代には武器や刃物、宝飾品として高い価値を持っており、産地から全国各地に広く流通していました。このため、火山研究などの地球科学の観点だけでなく、考古学分野における産地推定や流通経路の解明といった観点からも注目されています。しかし、いずれの黒曜石も主成分は SiO2 であるため、標準的な波数領域のラマンスペクトルでは産地間の違いは明瞭ではなく、これまでラマン分光法の使用は限定的でした。
ラマン分光法では、励起波長と同じ波長(ラマンシフト値が 0 cm-1)の散乱光であるレイリー散乱光を除去することが必要不可欠です。ここでは 10 cm-1 程度まで測定が可能な極低波数測定ユニットを用いてレイリー散乱光を除去することで、極低波数領域を含む測定を実現しました。
a) 170-AN-0021 金属材料表面に生じたさびの測定
b) 170-AN-0036 ラマン分光法による化学強化ガラスの分析
1) M. Tsuboi, K. Tamura, R. Kitanaka, H. Oka, K. Akao, Y. Ozaki: Appl. Spectrosc., 78, 186 (2024). DOI: 10.1177/00037028231219026
2) N. Terakado, R. Sasaki, Y. Takahashi, T. Fujiwara, S. Orihara, Y. Orihara, Commun. Phys. 3, 37 (2020). DOI: 10.1038/s42005-020-0305-7
3) K. Tamura, M. Tsuboi, K. Furukawa, K. Akao, H. Sato, Y. Ozaki: Appl. Spectrosc., 79, 1356 (2025). DOI: 10.1177/00037028251333469
