Li イオン二次電池 (図1 a) をはじめとする二次電池の性能には、構成要素の一つである電極 (正極・負極) のみに着目しても、活物質・バインダー・導電助剤といった複数の要素が影響します。そのため、電池性能向上につながる要因の究明や不具合の原因特定には、充放電試験等の電気化学特性の評価に加え、成分の分散状態や結晶構造等、電極そのものの性質を多角的に評価する必要があります。
ラマン分光法は Li イオン二次電池の正極・負極や電解質の分析が可能な分析手法であり、大気圧下での非破壊分析が可能です。ラマン分光法による分析からは、分子振動に基づく有機物と無機物の化学構造や結晶性の情報が取得でき、顕微ラマン分光光度計を用いてイメージング測定を行うと、1 µm 以下の空間分解能で各成分の凝集状態や分散状態を確認することができます。
ここでは、異なる2種類の活物質を混合して作製した正極 (図1 b)・負極をイメージング測定し、各成分の分布を可視化しました。
1) Jing Wu, G. K. P. Dathar, C. Sun,M. G. Theivanayagam, D. Applestone, A. G. Dylla, A. Manthiram, G. Henkelman, J. B. Goodenough, K. J. Stevenson: Nanotechnology, 24(42), 424009, (2013).DOI: 10.1088/0957-4484/24/42/424009
2) 峯 紗理奈,田村 耕平,田澤 裕介,鈴木 仁子,赤尾 賢一,平岡 紘次,関 志朗: 第64回電池討論会講演要旨集, 3D14 (2023).
a) “電池ハンドブック”,電気化学会 電池技術委員会編, p.107-p.108 (2010), (オーム社).