技術情報 アプリケーション Application Data 260-AN-0052
Raman Application Data

1064 nm 励起ラマン分光法を用いた蛍光回避測定

Introduction

ラマン分光法の測定条件を検討する際には、検出器の感度やラマン散乱光の強度を考慮して、多くの場合には励起波長 532 nm を選択します。しかし、この励起波長を使用する場合には、試料由来の蛍光によるベースラインの上昇が分析する上での問題となることがあります1)。この問題を解決するために、励起波長を長波長に変更することにより蛍光を誘起せずにラマン散乱光を測定する方法が知られています2)。一方、ラマン散乱光の強度は、近似的に励起波長の四乗に反比例することが知られています3)。そのため、蛍光回避のために励起波長を長波長に変更するとラマン散乱光の強度が減少する問題が発生します。

ここでは、励起波長に 1064 nm を採用した近赤外励起専用の顕微ラマン分光光度計を使用して、532 nm などの可視光領域の励起波長では分析することが難しい 2 種類の蛍光性試料を測定しました。併せて、微小なプラスチック粒子も測定することで、顕微測定の性能も確認しました。今回使用した装置には、検出器と対物レンズを含む各種光学素子に近赤外領域に最適化したものを採用しています。そのため、長波長レーザーを使用することによるラマン散乱光の強度低下の影響が低減されています。

1) 川﨑英也,中原佳夫, 長谷川健編: “機器分析ハンドブック 1 有機・分光分析編”, p. 163 (2020), (化学同人).
2) 田隅三生編著: “赤外分光測定法―基礎と最新手法”, 日本分光学会編集委員会編, p. 185 (2012), (エス・ティ・ジャパン).
a) 濵口宏夫, 岩田耕一編著: “ラマン分光法”, p. 53 (2015), (講談社サイエンティフィク).

Keywords
ラマン分光法、蛍光回避、近赤外励起、1064 nm レーザー、顕微ラマン分光光度計
アプリケーションデータ番号
260-AN-0052
発行
2024年
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