顕微分光法と多変量解析を組み合わせることで、微小試料の混合スペクトルから各成分のスペクトルを分離し、各成分の存在比も含めた微小領域の詳細な分析を可能にします。
従来の多変量解析手法 (PCA、CLS など) では困難だった、微小試料の分析や蛍光を発する試料の分析などにも適用できる可能性があります。
顕微分光法は、材料科学(高分子、半導体など)、環境分析、食品分析、法科学など、様々な分野で微小領域の分析に用いられています。一方、空間分解能以下の大きさの微小試料では、得られるスペクトルは複数の成分が重なり合った混合スペクトルとなるため、目的成分の定性分析が困難になることがあります。この課題を解決する手法として、多変量解析の1種である多変量カーブ分解(Multivariate Curve Resolution: MCR) が有効です。MCR により混合スペクトルから各成分のスペクトルを抽出し、種類や存在比を推定することができます。
ここでは、顕微分光法の1つである顕微ラマン分光法と MCR を組み合わせ、空間分解能以下の大きさの微小試料を測定し得られたイメージングデータを解析しました。特に、 1点測定では成分分離が困難な微小試料に対して MCR を適用することで、混合スペクトルから各成分のスペクトルに分離できることを示します。
MCR は、未知の成分を含む複数本の混合物のスペクトルデータから、各成分のスペクトルと存在比を推定するのに有用な手法です。PCA や CLS などの従来の多変量解析手法では、分析前に各成分のスペクトル情報などの事前知識を必要としましたが、MCR ではそれが不要であり、スペクトルが未知の成分の分析も可能になります。ただし、スペクトルが類似した成分の分離は困難な場合があります。その場合には、測定時の空間分解能や S/N などを改善する工夫が求められます。