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抗体の構造変化をスペクトルから統計的に評価するバイオ医薬品の新たな品質管理方法-qHOSプログラム-

qHOSプログラムの特長

CDスペクトルにはタンパク質の高次構造の情報が反映されることから、円二色性分散計はバイオ医薬品の開発や品質管理に利用されてきました。しかし、CDスペクトルの差異がどの程度なら有意な差であるかに関しては、長年、経験則や目視での判断が求められました。

qHOSプログラムは、スペクトルの差をユークリッド距離として算出し統計的手法を用いることで、CDスペクトルの変化が抗体などのタンパク質の構造変化を反映したものかどうかを客観的に判定し、バイオ医薬品等に関してスペクトルの同等性の合否判定ができます。

qHOSプログラム 同一性確認試験

qHOSプログラムの原理

qHOSプログラムは以下の原理に基づいて合否判定を行います。

  1. リファレンススペクトル(A)とサンプルスペクトル(B)を取得する。
  2. 複数のリファレンススペクトルの平均スペクトル(C)を算出する。
  3. (A)と(C)、(B)と(C)より、それぞれのスペクトルの差を重みづけユークリッド距離として算出する。
  4. 重みづけユークリッド距離の平均値と分散から統計検定を行い合否判定を行う。

統計検定にはStudent、Welch、TOSTの3つの手法を用意しています。

日本分光ではCDと同時に取得したHT電圧から推定されたノイズを用いてノイズの大きい波長域の重みづけを小さくする手法を用意しています。
(特開2020-191690)
ノイズ重み付けの有効性については以下の論文をご参照ください。
Oyama, T., Suzuki, S., Horiguchi, Y., Yamane A., Akao, K., Nagamori, K. and Tsumoto, K. (2022). Appl. Spectrosc., 76(12), 1482–1493.

qHOSプログラムの原理

円二色性分散計以外のスペクトルにも使用可能

qHOSプログラムは円二色性分散計以外にもフーリエ変換型赤外分光光度計、レーザラマン分光光度計、紫外可視近赤外分光光度計、分光蛍光光度計のスペクトルでも計算可能です。ひとつのサンプルを二種類以上の方法で分析して同一性を確かめる Orthogonal Assessment にも有用です。

MabThera® と RIABINI の円二色性分散計と赤外分光光度計での同一性評価の結果

FDA 21 CFR PART 11に対応

スペクトルマネージャーCFRでは、データインテグリティの要求事項であるALCOA+原則に基づいており、完全で正確なデータ作成をサポートします。qHOSプログラムは、スペクトルマネージャーCFRに対応しており解析に相当する合否判定に関してもデータインテグリティが保証されます。また、「アクセスレベル」と「ワークグループ」の2つのセキュリティ体系を利用することによって、分析システムの管理権限と装置・付属品・分析アプリケーション等の仕様に関する権限とを独立かつ柔軟に管理することができます。

HTCD Plus を利用することにより自動測定自動判定を実現

円二色性分散計J-1500にオートサンプラーASU-800CDを搭載したHTCD Plusで自動測定を行うことにより、サンプル交換などに伴う作業者の拘束時間を短縮します。

HTCD Plus