千葉大学 矢貝 史樹 教授らの研究グループは、世界で初めて原子間力顕微鏡でのポリカテナンの可視化を達成しました。
単一モノマーの自己集合により半径約13ナノメートルのトロイド(1つの輪)を合成し、22の輪からなる数百ナノメートルサイズのポリカテナン(1つの輪に複数の輪がついている状態)の合成に成功しました。一般的な半径が数ナノメートルスケールのトロイド由来のポリカテナンと比べて合成したポリカテナンは非常に大きく、世界初の可視化を可能にしました。この研究は、ナノトポロジーの特性を活かした新たな材料開発の道を開く研究として注目されています。
この成果は、2020年7月15日の Nature 誌に掲載されました。
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先生のご紹介
千葉大学 グローバルプロミネント研究基幹 教授
兼 大学院工学研究院 融合理工学府 共生応用化学コース 教授
* 所属は論文掲載当時
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先生からのコメント
ポリカテナン自体は実は研究の半ばには出来上がっていたのですが、それが分子の自己集合により自発的にできる仕組みを解明するのが非常に困難でした。鎖のようにリングが繋がるには、リングの中から新しいリングが形成される「2次核形成」という現象が鍵になっているはずだ、とは考えていましたが、これを実験的にどう証明するか悩みました。ここで活躍してくれたのが(もちろん実験してくれた学生さんもですが)、日本分光の温度制御装置付きの分光光度計です。この装置の信頼性の高さと優れた温度制御能力のおかげで、2次核形成が起こっているという証拠を掴むことが出来ました。
今回開発に成功したポリカテナンは、これまで報告されているポリカテナンよりもサイズが一桁大きく、「メゾスケール(100 nm〜1 µm)」と呼ばれるサイズ領域の構造体です。このような構造体が示す物性はこれまでに知られておらず、特に今回のリングは発光するという特徴を持ちます。今後は光物性とメゾスケールの鎖の特異な動きとの関わりについて調査を進めることで、これまでにない発光ナノマテリアルの開発が可能になると期待しています。