技術情報 アプリケーション Application Data 180-CA-0007
Application Note

CPL 測定システムおよび分光蛍光光度計を用いた白金錯体の凝集誘起円偏光発光(AICPL) 特性の評価

KeyPoints

180度配置光学系のCPL-300円偏光ルミネッセンス測定システムを用いることで固体試料の凝集誘起円偏光発光(AICPL)特性を評価することができます。

Introduction

円偏光発光(CPL)特性を有する化合物は、円偏光有機発光ダイオード(CP-OLED:circularlypolarizedorganiclight-emittingdiode)を用いた3次元ディスプレイ技術や、生体イメージングおよびセンシングに用いるプローブへの応用が期待されており、注目を集めています。これらの応用分野においてCPL材料を実用化するためには、凝集状態においてもCPL特性と十分な発光強度を有することが求められます。しかし、従来の多くの蛍光性分子は、固体状態または貧溶媒中における凝集体の形成に伴い、発光強度が著しく低下、あるいは完全に消失する凝集起因消光(ACQ:aggregation-causedquenching)現象を示すことが報告されてきました。2001年に、BenZhongTangらのグループによって、溶液状態では発光せず、凝集状態において発光する凝集誘起発光(AIE:aggregation-inducedemission)現象が報告されて以降1)、ACQへの対策としてAIE特性を有する化合物の研究が活発に行われるようになりました。これに伴い、近年では凝集状態においてCPLが増強される凝集誘起円偏光発光(AICPL:aggregation-inducedcircularlypolarizedluminescence)特性を有する化合物の研究も盛んに行われています。

一般に、新規合成された化合物のAIE特性評価は、分光蛍光光度計を用いて、良溶媒に対する貧溶媒の割合を段階的に変化させることで行われます。この測定では、混合溶媒中における試料の発光スペクトルを測定し、貧溶媒がある特定の割合を超えると凝集体の形成に伴い発光強度が増大することを確認します。また、CPL特性評価は、CPL測定システムを用いて、粉末やフィルムなどの固体状態、または凝集状態の試料のCPLスペクトルを測定することにより行われます。ここで、固体試料のCPL測定を行う際には、試料に蛍光異方性が存在する可能性を考慮し、一般的な分光蛍光光度計において採用されている90度配置の光学系ではなく、180度配置の光学系を用いる必要があります。

ここでは、上述の評価手法に基づき、FP-8550分光蛍光光度計によるAIE特性の評価に加えて、180度配置の光学系を備えたCPL-300を用いることにより、白金錯体の固体状態におけるAICPL特性の評価を行った結果を報告します。

1) J. Luo, Z. Xie, J.W.Y. Lam, L. Cheng, H. Chen, C. Qiu, H.S. Kwok, X. Zhan, Y. Liu, D. Zhu, B.Z. Tang: Chemical Communications, 381, 1740–1741 (2001) DOI: 10.1039/B105159H

Keywords
AICPL、凝集誘起円偏光発光、AIE、凝集誘起発光、CPL、円偏光発光、円偏光ルミネッセンス測定システム、分光蛍光光度計
アプリケーションデータ番号
180-CA-0007
発行
2025年
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