技術情報 アプリケーション Application Data 200-CD-0040
CD Application Data

HTCD Plus ハイスループット円二色性分散計を用いた、バイオシミラーのイノベーターに対する高次構造 (HOS) の同一性確認試験

Introduction

近年、抗体医薬品の開発・製造・上市が盛んに行われています。抗体医薬品は、抗体の特徴である高親和性及び高特異性を利用して目的細胞に発現した抗原のみに結合することにより悪性腫瘍細胞の増殖や免疫細胞の活性を抑制するなどの治療効果を示すものです。このような抗体医薬品は癌などの未だ完全な治療ができない疾患に対して有効な治療薬として期待されています。多くの抗体医薬品が世界的に利用されており、イノベーターと呼ばれる先行抗体医薬品と共に、イノベーターと同じアミノ酸配列を有しながら、異なる発現細胞を利用して作製されたバイオシミラーと呼ばれる抗体医薬品も現在数多く利用され始めています。

バイオシミラーは、イノベーターと同一アミノ酸配列のため、機能・構造が同一だと考えられる傾向がありますが、抗体はその作製工程において種々の刺激や修飾を受け、その結果機能が著しく損なわれる可能性があります。主なものとして、作製工程時の熱刺激やプロテアーゼによる断片化などがあげられます。そのため、刺激や修飾による抗体構造の変化を簡便に測定することは、抗体医薬品の研究開発や品質管理においては必須な工程です。

ICH Q5E では抗体医薬品の品質に関するガイドラインとして、製造工程変更前後での高次構造 (HOS) の同等性/同質性を客観的に評価することが示されています。また、FDA や EMA など世界各国のガイダンスにも、イノベーターとバイオシミラーの HOS の比較や二次構造組成比を評価すべきであると記載されています。抗体の品質を管理する測定法の一つとして、簡便に抗体のHOS の情報を取得できる円二色性 (CD) 分光法が幅広く利用されています。上記のガイドラインの施行に伴い、CD スペクトルの同一性や有意差を客観的かつ高感度に評価できる手法が求められるようになりました。これらの要望に対応するために開発された [qHOS] プログラムは、スペクトルの有意差を高感度に検出し、統計検定に基づき判定することが可能です。

ここでは、HTCD Plus ハイスループット円二色性分散計および [qHOS] プログラムを用いて、Rituximab のイノベーターである MabThera®/Rituxan® に対するバイオシミラーである RIABNITM 及びTrastuzumab のイノベーターである Herceptin® について同一性の判定を行った結果を報告します。

Keywords
抗体医薬品、高次構造、HOS、二次構造、三次構造、バイオシミラー、Rituximab、MabThera®、RIABNITM、Trastuzumab、Herceptin®、円二色性分散計、qHOS、同一性確認試験、多検体
アプリケーションデータ番号
200-CD-0040
発行
2022年
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