技術情報 アプリケーション Application Data 200-CD-0042
CD Application Data

高濃度モノクローナル抗体の HOS 評価

Introduction

抗体医薬品は 1986 年に初承認されて以来、この数十年間で劇的にその市場を拡大し、近年では新薬の大部分を占めています。抗体医薬品は製造や保管の過程で、外部からの様々な刺激により、物性が変化することがあります。特に、抗体医薬品の安全性や有効性に影響を及ぼす物性は重要品質特性 (critical quality attributes: CQAs) と呼ばれ、製造・保管環境がどのような影響を与えるかを評価することが求められます。また、抗体医薬品は、その多くが 10 ~ 200 mg/mL の高濃度で処方されます。タンパク質は濃度によって異なる物性を示すことがあるため、処方濃度で抗体の CQAs を評価することが重要です。

抗体の高次構造 (higher-order structure: HOS) は生理活性に直接的に影響を与えるため、CQAs の候補として挙げられます。代表的な HOS の評価法には、円二色性 (circular dichroism: CD)分光法と赤外 (infrared: IR) 分光法があります。CD 分光法は、通常 10 mg/mL までの比較的低濃度のタンパク質溶液の二次構造および三次構造の情報を得るために使用されます。赤外分光法は二次構造の評価法として用いられ、100 mg/mL 以上の高濃度のタンパク質溶液だけでなく、懸濁液や固体状態のタンパク質測定も可能です。

抗体医薬品の物性評価においては、1 つの物性を原理が異なる複数の手法で評価する orthogonal assessment の有用性が強調されています。特に、バイオシミラー (抗体医薬品の後続品) の開発において、orthogonal assessment はのちに行われる臨床実験の効率化、費用削減に役立つとされています。

ここでは、抗体医薬品に最もよく利用される IgG を用いて、CD と IR による二次構造の orthogonal assessment を行いました。さらに、短光路セルを使用することで 150 mg/mL 以上までの高濃度 IgG 溶液の近紫外 CD スペクトル測定に成功しました。

Keywords
抗体医薬品、モノクローナル抗体、重要品質特性 (CQAs)、高次構造 (HOS)、円二色性 (CD) 分光法、赤外 (IR) 分光法、二次構造解析 (secondary structure estimation: SSE)、IgG、高濃度タンパク質、orthogonal assessment
アプリケーションデータ番号
200-CD-0042
発行
2022年
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