技術情報 アプリケーション Application Data 200-CD-0045
CD Application Data

製剤化された抗体医薬品の二次構造解析
-JASCO Spectra ManagerTM 2.5 BeStSel CFR による評価-

Introduction

抗体医薬品の二次構造や三次構造などの高次構造(Higher-order structure: HOS)は、重要品質特性(CQA)の一つです。二次構造評価の最もよく知られた方法は、円二色性(CD)分光法です。CD 分光法は、低濃度のタンパク質(0.1 mg/mL 以下)を短時間で容易に測定できる特長を持ち、幅広いタンパク質の構造解析に利用されてきました。一方で、抗体医薬品の多くは 10 mg/mL 以上の高濃度で製剤化されます。このような条件下では、抗体分子は希釈条件下とは異なる分子間相互作用や HOS の変化を引き起こす可能性があります。これらの変化は、重大な免疫原性を引き起こす凝集体の形成につながるため、希釈せずに抗体の高次構造の評価を行うことは非常に重要であり、CD 分光法を用いた高濃度の抗体の測定法の開発が望まれています。

長年 CD 分光法による二次構造解析は、抗体のように β-sheet を豊富に持つタンパク質の推定精度に課題を持っていました。2015年、Eötvös Loránd University, Hungary: ELTE の József Kardos 博士、András Micsonai 博士が中心となり、β-strand 間のねじれを考慮し、CD スペクトルから二次構造を精度良く推定できるアルゴリズム BeStSel が開発されました。BeStSel は、抗体など β-sheet に富んだタンパク質を含む幅広いタンパク質に対して高い推定精度を持つ、8 種類の二次構造情報を取得できる、CATH 分類に従ってタンパク質の折りたたみを予測できる、オープン Web サーバーを介して利用できる、などの特徴があります。

多くの研究者が BeStSel オープン Web サーバー(https://bestsel.elte.hu/index.php)を利用できる一方で、GxP 環境を必要とする研究者は BeStSel を利用することができず、GxP 対応のソフトウェアの開発が望まれていました。日本分光は József Kardos 博士、András Micsonai 博士と GxP 環境での測定・解析を提供する JASCO Spectra ManagerTM 2.5 BeStSel CFR を共同で開発しました。

ここでは、短光路セルと JASCO Spectra ManagerTM 2.5 BeStSel を組み合わせて、製剤化された抗体医薬品に対して高精度な二次構造解析を実施した結果を報告します。

Keywords
抗体医薬品、BeStSel、高次構造、HOS、二次構造、バイオシミラー、円二色性分散計
アプリケーションデータ番号
200-CD-0045
発行
2023年
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