技術情報 アプリケーション Application Data 200-CD-0051
CD Application Data

抗体医薬品の高次構造評価を行うためのデータ処理の効率化

Introduction

抗体医薬品は、この数十年のうちに市場を劇的に拡大し、現在では主要なバイオ医薬品の一つとなっています。タンパク質である抗体は、複雑な非共有結合の積み重ねによって高次構造 (HOS:Higher-order structure) を形成し、その機能を発現します。しかし、バッファー条件の変更など外部刺激の影響によって構造が変化し、その機能が失われるため、外部刺激を与えた時の HOS の安定性評価は極めて重要です。また、抗体医薬品の後続品であるバイオシミラーの開発においては、臨床実験の効率化のために、先発品であるイノベーターとの HOS の同一性評価が非常に重要視されています。

CD 分光法は、溶液中のタンパク質の二次構造や三次構造の情報を容易かつ迅速に得ることができる方法として知られています。そして、外部刺激を与えた時のタンパク質の HOS の安定性や、イノベーターとバイオシミラーの HOS の同一性を評価する目的で広く利用されています。これらの評価では、多数の試料の CD スペクトルを取得する必要があることから、最大 192 検体のスペクトルを自動測定可能なハイスル―プット円二色性測定システム HTCD Plus が有効です。また、得られたスペクトルを用いて、HOS の安定性や同一性を評価するためには、膨大な数のスペクトルに対してデータの前処理が必要です。そこで日本分光は、HTCD Plus から出力される CD と吸収スペクトルに対して、あらかじめ設定したデータ処理を一括で行うことができる [HTCD バッチ処理] プログラムを開発しました。ここでは、HTCD Plus を用いて、異なる pH 条件下における Rituximab のスペクトルを取得し、得られたスペクトルに対して、[HTCD バッチ処理] プログラムを用いてデータの前処理を一括で行い、高精度に二次構造組成比を推定することができる [BeStSel] プログラム*を用いて Rituximab の二次構造の pH 依存性を効率的に評価した結果を示します。
* JASCO Spectra Manager 2.5 BeStSel プログラムは、 ELTE の József Kardos 博士、András Micsonai 博士と日本分光の共同で開発されました。

Keywords
効率化、自動化、抗体医薬品、BeStSel、高次構造、HOS、二次構造、円二色性分散計、Rituximab
アプリケーションデータ番号
200-CD-0051
発行
2025年
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