ホワイト系の真珠は、貝から採取後に真珠層中の有機物の黒味が漂白によって除去され、その後、調色※によって真珠の美しさを引き出す加工がされています。この調色が過剰に行われると真珠本来の色とは異なる赤みがかった色になります。調色具合の評価は従来目視で行われていましたが、客観的な評価を行うために分析装置による測定の必要性が高まっています。
※ 調色:ホワイト系の真珠をごく薄いピンク色に染める加工。真珠の干渉色によるピンク色とは異なる。
一般に、物体の色彩は分光光度計と積分球を使用して評価されています。積分球を用いた測定には、正反射光を含める測定法と含めない測定法があります。
正反射光は照明光の影響を強く受けるため、物体を人が見た時にどのような色彩に見えるかを評価する場合は、正反射光を含めずに測定します。正反射光を取り除く場合、正反射光の位置に光を吸収する光トラップを取り付けたり、正反射光を積分球の入射開口から除去したりします。
しかし、真珠のような球体の場合、正反射光は様々な方向に反射するため、これらの方法を用いても正反射光を除去することができません。そこでここでは、別のアプローチとして分光蛍光光度計特有の光学系を利用し、拡散反射成分のみのスペクトルを取得することで真珠の調色具合を評価した例を示します。一般に分光蛍光光度計は、入射光の検出を防ぐために入射光路と検出光路が直交する設計になっており、本測定を行う上で適しています。