光線力学的療法に応用可能な一重項酸素のりん光検出および量子収率測定

一重項酸素(¹O₂)はその強い酸化力から腫瘍組織を破壊することができるため、癌の治療法の一つである光線力学的療法 (photodynamic therapy:PDT) に応用されています。酸素は基底状態が三重項状態であるため、一重項状態への直接的な遷移は禁制ですが、光増感剤の存在により一重項酸素の生成が可能になります。

一重項酸素のりん光は波長 1270 nm 付近にピークを示し、一般的に微弱なものです。しかし、光増感剤に重金属元素が含まれるとそれによる重原子効果や、ハロゲン系溶媒の使用などにより、りん光を増強できることが知られています。一重項酸素の量子収率測定は、光増感剤の化学構造や溶媒等の条件検討、一重項酸素のりん光寿命を解明するアプローチとなるため、重要です。

ここでは、近赤外領域まで測定可能な分光蛍光光度計 FP-8750 と積分球内に試料を設置できる 120 mmΦ 積分球ユニットを用いて、四塩化炭素 (CCl₄) 溶媒中のPlatinum octaethylporphyrin (PtOEP) により増強された、一重項酸素のりん光量子収率を測定しました。