蛍光異方性は、蛍光分子が励起されてから蛍光を発するまでの間に、その分子がどの程度回転運動したかという情報を反映します。励起から発光までの間に蛍光分子が回転しない場合、励起光の偏光状態が維持された蛍光が発せられます。一方、励起から発光までの間に蛍光分子が回転した場合、分子の回転分だけ偏光状態の変化した蛍光が発せられます。つまり、蛍光分子が回転しやすいほど、励起光の偏光状態が解消された偏光を持つ蛍光が観測されます。このことを利用して、蛍光異方性からは蛍光分子の回転しやすさを知ることができます。蛍光分子の回転しやすさは以下のような情報を反映しています。
上記のような分子情報は、生物分野ではタンパク質や核酸などの生体高分子の結合状態、立体構造の変化の観察に利用されています。特に、タンパク質においては芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)の回転運動性を反映していることが知られており、立体構造変化の様子を知る指標となります。
ここでは、変性剤である塩酸グアニジンの濃度を変化させたときのアポα-ラクトアルブミンの蛍光異方性の変化を観測しました。