技術情報 アプリケーション Application Data 250-FP-0023
FP Application Data

近赤外蛍光測定システムによる一重項酸素のりん光検出

Introduction

一重項酸素は、活性酸素の一つで、強い酸化力を持つために生体分子を破壊することが知られています。そこでこの性質を利用し、一重項酸素を用いて癌細胞や細菌を破壊して病気を治療する光線力学療法への応用が注目されています。ここでは、Eosin Yを光増感剤として、一重項酸素が放射する1270nmのりん光の3Dスペクトルを近赤外分光蛍光光度計FP-8700で検出した例を紹介します。


一重項酸素発生のメカニズム
空気中や液中に存在する酸素は、基底三重項状態の三重項酸素です。この三重項酸素にエネルギーを与えると、励起一重項状態へ遷移して一重項酸素となりますが、三重項酸素から一重項酸素への遷移は禁制遷移であるため、直接光励起を行うことができません。
そこで、一重項酸素を発生させるために光増感剤を用います。光増感剤を光励起して、項間交差により励起三重項状態になり、光増感剤の励起三重項状態 – 基底状態のエネルギー差と、酸素の一重項 – 三重項間のエネルギー差とがほぼ等しくなると、励起三重項状態にある光増感剤と三重項酸素とが衝突することでエネルギー交換が起こります。そして、光増感剤が基底状態に戻るとともに、三重項酸素から一重項酸素への遷移が起こります。

Keywords
一重項酸素、近赤外蛍光、りん光、光増感剤
アプリケーションデータ番号
250-FP-0023
発行
2017年
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