技術情報 アプリケーション Application Data 050-AT-0246
FTIR Application Data

水分・酸化・離油度に着目したグリスや潤滑油の劣化評価

~ ATR 法を利用した工業用グリスの劣化分析 ~
Key Points
  • グリスや潤滑油の劣化を水分の影響・酸化・離油度に着目して赤外分光光度計で評価
  • 水分の影響は O-H 伸縮振動、酸化の進行は C=O 伸縮振動、離油度は C-H ピークと C=O ピークの比から分析
  • 各ピークの高さをプロットすることで、それぞれの影響を定量的に評価可能
Introduction

潤滑油やグリス等の潤滑剤は、あらゆる機械の可動部を円滑に動作させるために利用されています。しかし、潤滑剤は空気や熱による酸化劣化や金属摩耗による金属粉混入などで経時劣化するため、定期的に点検・交換が必要となります。こうした潤滑剤の劣化の度合いをモニターすることができれば、交換時期を的確に予測できるため、機械の安定稼働に寄与するものと考えられます。潤滑剤の評価方法は様々なものがあり、FTIR でも光路長100 µm 透過セルを使用して評価する手法が ASTM に記載されています。しかし、可動部が小さく採取できる量が少ない場合やグリス等の粘性サンプルの場合、こうした評価手法に準拠した分析ができないケースが存在します。そこで今回は、微量な潤滑剤の分析事例として、FTIR の測定手法の一つであるマクロ ATR 法を利用し、スイッチ部分に使用されているウレア系増ちょう剤を含む工業用グリスの劣化分析を行いましたのでご報告いたします。

マクロ ATR 法による水混入・酸化・離油度の評価

ATR 法は、屈折率の高い赤外透過結晶(プリズム)に試料を密着させて試料表面を測定する手法です。このため、微小量の試料を前処理なく測定できます。また、ATR 法では試料側に赤外光がもぐりこむ深さ(=サンプルの表面情報を取得する深さ)は、赤外光の入射角およびプリズムと試料の屈折率にのみ依存する(参照:FT/IR application data 280-AT-0003)ため、同系統のサンプルを測定する場合においては、定量性を持った測定法と言えます。
ここでは使用前後のグリスをマクロ ATR 法で測定し、水混入・酸化・離油度の評価を行いました。

Keywords
潤滑油、機械油、水混入度、酸化、離油度
アプリケーションデータ番号
050-AT-0246
発行
2016年
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