技術情報 アプリケーション Application Data 101022U
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SFC-CD-MSを用いたキラル分離における農薬の高感度かつ包括的な検出

Introduction

現在、世界的に使用されている農薬の約30%は、1つもしくは複数のキラル中心をもつキラル農薬です。キラル農薬の各エナンチオマーは、生物活性、非標的生物に対する毒性、代謝率および環境中における生物分解などに関して異なる特徴を示します。より効果的で安全なエナンチオマーの使用が望ましくなりますが、エナンチオマー単体の製造には複雑な工程と高いコストを要するため、キラル農薬の大半はラセミ体として市場で扱われています。

一般的に、液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)および超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)によるキラル分離は、個々のエナンチオマーの合成アプローチにおけるもっとも重要な手法の一つとなっています。なかでもHPLCは、その扱いやすさから、キラル分離の手法として従来から最も重用されていますが、近年では、分析時間の短縮化や溶媒消費量およびコストの削減が可能なSFCも注目されています。

今回は、円二色性検出器(CD検出器)および質量分析計(MS検出器)を接続したSFCを用いて、キラル農薬の検出法を開発しました。CD検出器は、円二色性とUV吸収のデータを同時に出力し、各エナンチオマーのCD極性を選択的に検出することが可能です。また、MS検出器で得られるマススペクトルは、同じm/zを持つキラル異性体グループと不純物などのその他の成分との識別に有効です。CD検出器およびMS検出器を用いた高感度かつ包括的な検出は、エナンチオマー単体の農薬の効率的な開発において、確度の高い分析を実現します。また、本システムおよび検出法は、キラル化合物を扱う多くの分野で応用可能です。

ここでは、SFCを用いて、メソッドスカウティングによりトリアゾール系殺菌剤の一種であるブロムコナゾールのキラル分離条件の検討を行い、キラル異性体グループの判別と、エナンチオマーの判別を簡易的に行った例を紹介します。

Keywords
キラル分離, 農薬, エナンチオマー, SFC, 円二色性検出器, 質量分析計, CHIRALPAK, CHIRALCEL
アプリケーションデータ番号
101022U
発行
2018年
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