食品や化学等の工業分野では、開発や受入検査、品質管理において定量分析が広く行われています。定量分析の手法としては、紫外可視分光法(UV-Vis)、赤外分光法(IR)などが有力な手法として用いられてきました。しかし、定量したい成分がグルコース等の糖で試料が水溶液の場合、糖は紫外・可視領域に吸収帯がなく、水には赤外領域に強い吸収があることから紫外可視分光法や赤外分光法での定量が不向きと言われています1)。そこで、ここでは糖を分析可能で、水の影響も受けにくい分光測定手法であるラマン分光法による水溶液中のグルコースの定量例を紹介します。
測定にはパームトップラマン分光光度計とオプション付属品の角型セルホルダーを使用しました。
● 角型セルホルダーについて
ラマン散乱光の強度と目的成分の濃度は比例関係があるため、ピークの高さから定量分析をすることが可能です。定量測定の場合、レーザーのフォーカス位置が信号強度に影響を与えるため、常に同じ位置にフォーカスを合わせることが重要です。角型セルホルダーと付属のスペーサー治具は、試料設置位置とフォーカス位置を再現性良く合わせることができるため、定量分析に有効です。
ここでは 0.5 wt% - 10 wt% のグルコース水溶液の検量線を作成しました。
1) 五十嵐 弘樹,沼田 靖,田中 裕之: 廃棄物資源循環学会研究発表会講演集, 26, 235 (2015). 詳細はこちら >