一般的な薄膜の厚みの測定法には、波長走査型分光光度計等で測定する非接触の光学式と触針式段差計等で測定する接触式があります。これらはデバイスや光学材料の薄膜の厚みの評価に利用されています。
しかし、ソフトマテリアルと呼ばれる高分子、液晶、コロイド、エマルジョン、タンパク質等の柔らかい材料で構成された膜には、短時間のうちに揺らぎや膜厚変化が起きるものがあります。このような膜の厚みをリアルタイムで評価するには、非接触で測定可能な光学式であることに加えて、スペクトルの時間変化を追跡できる必要があります。多波長同時検出が可能なフーリエ変換型やマルチチャンネル型の分光器による測定は、これらの制約を満たすため、ソフトマテリアルの膜の膜厚評価に適応できる可能性があります。
ここでは、マルチチャンネル検出器を搭載したポータブル分光光度計MV-3000シリーズを用いてシャボン膜の透過スペクトルの時間変化を測定しました。シャボン膜は、ソフトマテリアルのモデル膜として選択したものです。得られたスペクトルの時間変化データに対してそれぞれ膜厚計算を行った結果、良好な測定結果が得られましたので報告します。