ホーム 矢印 技術情報 矢印 アプリケーション 矢印 トピックス 矢印 ラマン分光法アプリケーション集 矢印 フォトルミネッセンス(PL)測定による半導体材料の物性評価
ラマン分光法 アプリケーション集

フォトルミネッセンス(PL)測定による半導体材料の評価

はじめに
フォトルミネッセンス(PL)の発光強度や蛍光波長を測定することで、化合物半導体の組成比やキャリア濃度等の情報を得ることができます。ラマン顕微鏡は、搭載するレーザー、フィルター、グレーティングの構成を変えることで、PL 測定を行うことができ、同一箇所でのラマン測定が可能なため、複合的な解析も可能です。ここでは PL 測定による半導体材料の評価例を紹介します。

InGaN のフォトルミネッセンス(PL)測定

LED などに用いられる InGaN は In の組成量によりバンドギャップが変化する特徴を有しています。しかしながら、In 量が増えると均一な結晶成長が難しく、組成が不均一になりやすい傾向があります。フォトルミネッセンス(PL)測定を行うことで組成の不均一性を評価できます。Fig.1 に InGaN/GaN(単一量子井戸)の PL スペクトル例を示します。
InGaNのPLスペクトル
Fig.1 InGaN/GaN 単一量子井戸の PL スペクトル
PL 測定により In の組成量の違いをピーク位置の変化で検出することができます。ピーク位置の違いを利用して、PL イメージング測定にて In 組成比の面内分布を表示することもできます。Fig.2 に各ピークの PL 強度分布を示します。高空間分解で In 組成比の面内分布を評価することができました。
InGaNのPLイメージング
Fig.2 各ピーク強度の PL イメージング図(赤:ピーク位置① 437 nm、緑:ピーク位置② 454 nm、青:ピーク位置③ 483 nm)

SiC のフォトルミネッセンス(PL)/ラマン複合分析

フォトルミネッセンス(PL)測定にて SiC の欠陥・バンドギャップ・キャリアドープの評価、ラマン測定にて結晶性・歪みの分析を行うことが可能です。Fig.3(左)に SiC 表面上の観察画像、Fig.3(中央)に PL 測定の結果、Fig.3(右)にラマン測定の結果を示します。PL イメージング測定より欠陥や不純物由来の発光を観測することができ(青)、またラマンイメージング測定より結晶構造が異なる部位を観測することができました(赤)。PL、ラマン測定を行うことにより多角的・複合的な情報を取得することができます。
SiCの観察画像、PL/ラマンイメージング
Fig.3 左:SiC の表面上の観察画像、中央:PL イメージング結果(405 nm 励起)、右:ラマンイメージング結果(532 nm 励起)

MoS2 のフォトルミネッセンス(PL)/ラマン複合分析

グラフェンに続く原子膜材料として注目される硫化モリブデン(MoS2)は、次々世代トランジスタ材料としても注目されています。フォトルミネッセンス測定を行うことで、トランジスタの性能指標となるバンドギャップの情報を得ることができます。Fig.4(左)に下半分に電子線照射した MoS2 結晶の観察画像、Fig.4(中央)に PL イメージング測定の結果を示します。可視観察像上では変化を確認することができませんでしたが、照射部・未照射部の PL スペクトルから電子線照射によるバンドギャップの変調を確認することができました。Fig.4(右)に応力によるピークシフト変化(E12g)のイメージング測定の結果を示します。MoS2 のラマンスペクトルは層数・応力によりピークがシフトします。ラマン・PL の結果より、電子線照射に伴い、層数とバンドギャップが変化していることが確認できました。このようにラマン・PL の複合分析により MoS2 の多角的な評価が可能です。
MoS2の観察画像、PL/ラマンイメージング
Fig.4 左:MoS2 の表面上の観察画像、中央:670 nm PL ピークシフト色分け図(532 nm 励起)、右:385 cm-1(E12g)ピーク中心波数色分け図(532 nm 励起)
サンプルは千葉大学 工学部 青木伸之先生からご提供いただきました。
スクロールトップアイコン