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赤外線天文衛星「あかり」の開発及び打ち上げに貢献

概要

赤外線天文衛星に搭載した日本分光の赤外線分光器に関する技術に対して、平成18年7月7日、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)より感謝状を受けました。
あかりに関していただいた賞状

赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)

「あかり」(打ち上げ前の名称は「ASTRO-F」)は、JAXA 宇宙科学研究本部を中心に計画が進められてきた赤外線天文衛星です。日本の衛星搭載赤外線望遠鏡としては、SFU衛星(1995年打ち上げ)に搭載されたIRTSがありました。「あかり」はこれに続く軌道上赤外線望遠鏡で、単独の本格的な赤外線天文衛星としてはわが国初となります。IRAS衛星(1983年打ち上げ、米英蘭)は、赤外線による全天観測を世界で初めて行い、天文学の進歩に大きく貢献しました。「あかり」は、IRAS衛星と同様の全天サーベイ観測を、より広い波長域で、はるかに優れた空間分解能と検出能力で実行しようとする野心的なミッションです。「あかり」の望遠鏡は口径68.5cmの冷却型で、観測波長は波長1.7ミクロンの近赤外線から波長180ミクロンの遠赤外線までをカバーします。「あかり」は宇宙研の主力ロケットM-Vによって、高度約700kmの太陽同期軌道に打ち上げられました(ASTRO-F衛星を搭載したM-Vロケット8号機は2006年2月22日6時28分(日本標準時)に内之浦宇宙空間観測所から打上げられました。打ち上げ後、ASTRO-F衛星は「あかり」と命名されました)。
あかりのイメージ図
図2 あかりのイメージ(上図)と部分説明(下図)

「あかり」の観測装置

「あかり」の焦点面には、遠赤外線を観測する遠赤外線サーベイヤー(FIS,Far-Infrared Surveyor)と、近・中間赤外線カメラであるIRC(InfraRed Camera)の2種類の観測装置が搭載されます。
あかりの観測装置

日本分光が光学系を担当した、遠赤外線サーベイヤー

FISは遠赤外線で全天サーベイを行うことを主な目的として搭載されている観測装置です。検出器にはゲルマニウムに少量のガリウムをドープした半導体結晶(Ge:Ga)を使用します。Ge:Ga素子は圧縮して用いることで、より長い波長の赤外線を検出することができます。FISでは圧縮したGe:Ga検出器と普通のGe:Ga検出器を2台搭載して広い波長範囲の遠赤外線を観測します。さらにそれぞれの検出器はフィルターで観測波長を区切って使用するため、4つのバンド(波長帯)で観測することになります。
遠赤外線サーベイヤー

ASTRO-Fミッションの目的

赤外線天文衛星ASTRO-Fは、赤外線による天体サーベイを目的としたミッションです。1983年に打ち上げられた世界初の赤外線天文衛星(Infrared Astronomical Satellite)によるサーベイに比べ、遥かに優れた解像度と検出能力で、現在の天文学上の要求に応える第2世代赤外線サーベイを実行します。
ASTRO-Fの発射

ASTRO-Fの観測装置

ASTRO-Fには、近・中間赤外線カメラであるIRC(Infrared Camera)と、遠赤外線を観測するFIS(Far-Infrared Surveyor)の2種類の観測装置が搭載されます。この遠赤外線観測部に日本分光の技術が搭載されています。

衛星の軌道と姿勢モード

ASTRO-Fの観測はサーベイモード(Survey Mode)とポスティングモード(Pointing Mode)という2種類の衛星姿勢モードで行われます。

サーベイモードはASTRO-Fの基本観測モードで、望遠鏡の向きが太陽とも地球の中心方向とも常に垂直になるように制御されます。従って、衛星が地球の周りを一周するごとに、望遠鏡も天球上を一周観測します。地球から見た太陽の方向は一年で一周することから、サーベイモードでは半年間で全天の観測をすることができます。

ポインティングモードは、天球上のある方向を、長時間積分観測あるいは分光観測を行いたい場合に使用されます。衛星を慣性空間上で静止させ、観測を行います。ただし、地球や太陽からの光の入射を避けるため、一回の観測は最大約10分間となっています。衛星が地球を一周する間に、最大3回のポインティング観測を行います。