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低分子量ヘパリンの分析・測定 SEC-RI/UVによる分子量計算プログラムの紹介

概要

ヘパリンとは、抗凝固薬の一つとして血栓塞栓症の治療および予防、播種性血管内血液凝固症の治療、血液透析・人口心肺その他の体外循環装置使用時の血液凝固防止などに用いられるムコ多糖類です。

低分子量ヘパリンはヘパリンを酵素または化学処理により分解させた、分子量1,000~10,000(平均分子量:4,000~5,000)の分画であり、出血副作用が少ないことから広く利用されています。この低分子量ヘパリンは、ヘパリンの分解方法や分子量分布によりパルナパリン、ダルテパリン、レビパリンおよびエノキサパリンなどに分類されています。

第十六改正日本薬局方(JP)では、低分子量ヘパリンのナトリウム塩の一つである"パルナパリンナトリウム"について、医薬品各条に分子量測定法、質量平均分子量および分子量分布が規定されています。
ヨーロッパ薬局方(EP)では、各低分子ヘパリンナトリウム(パルナパリンナトリウム、ダルテパリンナトリウムなど)の質量平均分子量や分子量分布がそれぞれの医薬品各条で規定されており、分子量測定法は、別途に収載されている“低分子量ヘパリン”の医薬品各条の方法に基づくように規定されています。
低分子量ヘパリン
図1 パルナパリンナトリウム(左)、ダルテパリンナトリウム(右)の化学式

低分子量ヘパリンの測定・解析方法

JPおよびEPともに低分子量ヘパリンの測定は、紫外可視吸光度検出器(UV)および示差屈折率検出器(RI)を使用した水系サイズ排除(SEC)クロマトグラフィーにより行います。両薬局方とも低分子量ヘパリン標準試料のRIとUVの強度比(RI/UV)を用いて検量線を作成するという概要は共通しています。
各薬局方での計算・解析方法は、複数の分子量測定用標準品を用いて分子量校正曲線を作成する一般的な分子量・分子量分布の測定とは異なるため、市販されているSECクロマトグラフィー用のソフトウェアでは解析ができません。
そのため、測定結果を外部の表計算ソフトウェアに出力して、計算解析を行う必要があり、一連のデータ処理の記録を測定結果と紐付けて保存しておくことが難しくなります。
HPLCシステム
図2 低分子量ヘパリンを測定するためのHPLCシステム
日本分光の"低分子量ヘパリン分子量計算プログラム"を使用すれば、前述のような煩雑な作業は必要ありません。最適化されたパラメーター設定、計算エンジン、およびビジュアル表示により、直感的な操作環境を提供します。

分子量計算プログラムの特長

  • 分子量検量線の作成、分子量計算が最適化され、単一のソフトウェア内で測定から解析まで実行可能
  • JPおよびEP収載の平均分子量および分子量分布計算に対応
  • 複数回測定した標準試料クロマトグラムからの分子量検量線の作成およびプレビュー機能に対応
  • 最適化された計算エンジンより標準試料クロマトグラムの波形処理で指定数以上のピークを容易に検出(JP)
低分子量ヘパリン分子量計算プログラム
図3 低分子量ヘパリン分子量計算プログラム(ChromNAV Ver.2 オプション)