技術情報 アプリケーション Application Data 200-CD-0043
CD Application Data

HTCD Plus ハイスループット円二色性分散計を用いた抗体医薬品の強制分解試験

Introduction

近年、抗体医薬品の開発・製造・上市が盛んに行われています。抗体医薬品は、抗体の特徴である高親和性および高特異性を利用して目的細胞に発現した抗原のみに結合することにより悪性腫瘍細胞の増殖や免疫細胞の活性を抑制するなどの治療効果を示します。このような抗体医薬品は癌など、完全な治療ができない疾患に対して有効な治療薬として利用されています。

抗体は共有結合に加え多数の非共有結合を駆動力として高次構造 (Higher Order Structure: HOS)を形成することで活性を発現するため、その作製工程において種々の刺激や修飾、分解を受け、機能が著しく損なわれる可能性があります。抗体医薬品の分解メカニズムの知見を得ることは、品質、安全性、薬効に対するリスク、製造性の理解につながるため、候補分子の選定から承認後までの各段階において、強制分解試験が頻繁に実施されます。ICH Q5C において、生物薬品を対象とした安定性試験のガイドラインが示されており、加速・過酷条件における試験の重要性が述べられています。強制分解試験 (Forced degradation studies: FDS) の主な刺激として、熱、凍結融解、攪拌、pH、光照射、酸化/還元、糖化があり、これらの刺激による抗体の物理化学的特性の変化を迅速に検出することは、抗体医薬品の研究開発や品質管理において極めて重要です。

円二色性 (CD) 分光法は、簡便に抗体の HOS の情報を取得できる手法であり、ICH Q6B において HOS を評価する手法として記載されていることから、抗体の品質を管理する測定法の一つとして幅広く利用されています。ICH Q6B をはじめとしたガイドラインの施行に伴い、CD スペクトルの同一性や有意差を客観的かつ高感度に評価できる手法が求められるようになりました。これらのニーズに対応するために開発された [qHOS] プログラムは、スペクトルの有意差を高感度に検出し、統計検定に基づき、判定できます。

ここでは、抗体医薬品の一つである Rituximab を対象として、HTCD Plus ハイスループット円二色性分散計および [qHOS] プログラムを組み合わせて、FDS による HOS 変化の統計的な判定を実施した結果を報告します。

Keywords
抗体医薬品、高次構造、HOS、強制分解試験、FDS (Forced degradation studies)、Rituximab、円二色性分散計、qHOS、同一性確認試験、多検体
アプリケーションデータ番号
200-CD-0043
発行
2022年
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