技術情報 アプリケーション Application Data 100-AT-0230
FTIR Application Data

大型試料対応型1回反射ATRを用いたA1サイズのポリ塩化ビニルシート中に含まれる可塑剤の同定および定量

Introduction

ポリ塩化ビニル(PVC)は、硬質にも軟質にもできる利点を有することに加え、難燃性で耐水性、耐酸性・耐塩基性にも優れたプラスチックとして幅広く用いられています。軟質のPVCには、柔らかくするための可塑剤が添加されており、エステル系化合物が一般的に用いられています。特にフタル酸エステルは高性能の可塑剤として広く用いられてきました。しかし、フタル酸エステル類は、近年発癌性の疑いや生殖機能への影響などが指摘されるようになってきました。このため、現在ではEUの玩具指令およびアメリカの消費者製品安全性改善法(CPSIA)によって6種類(DEHP・DBP・BBP・DINP・DIDP・DNOP)のフタル酸エステル類の玩具類への使用が規制されています。日本でも、食品衛生法で2種類のフタル酸エステル(DEHP・DINP)の玩具類への使用が規制されており、2011年9月からは対象をEU等と同じ6種類に増やすことが決まっています。さらに、一部のフタル酸エステル類(DEHP・DBP・BBP)がREACH規制の高懸念物質候補に挙がっており、RoHS指令の対象に指定する検討も行われています。

フタル酸エステル類の分析にはGC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)等が広く用いられていますが、測定に時間を要したり試料の分離抽出が必要であるなど時間とコストがかかります。一方、赤外分光法は、数%以上の含有率であれば試料中のフタル酸エステル類を1分程度の短時間で検出できます。特にATR法は、試料をプリズムに密着させるだけで、試料の厚みや色に関わらず試料表面の評価が可能です。フタル酸エステルは、軟質PVCの可塑剤として通常10~60%程度添加されているので、赤外分光法はスクリーニング検査には最適な手法と言えます。

今回は、A1サイズのPVCシートを大型試料対応型1回反射ATRを用いて測定し、可塑剤にフタル酸エステルが使用されているかを判定するとともに、含有量の定量を行いましたのでご報告いたします。

Keywords
ATR、大型試料、成型品、フタル酸エステル、PVC、可塑剤
アプリケーションデータ番号
100-AT-0230
発行
2011年