日本分光では入射角度を一般的な45度からさらに大きくし、65度に設定した ATR PRO650X をラインナップしています。
入射角度が大きくなったことで、カーボン含有ゴムやSiウェーハなどの高屈折率試料の測定や試料最表面の情報を取得できるようになりました。
全反射条件は図1の式で表されます。
プリズムとしてゲルマニウム(n1 = 4.0)を使用した場合、式より65度入射では n2 = 3.6、 45度入射では n2 = 2.8 と得られます。
つまり、65度入射の方がより高屈折率の試料を測定できます。
もぐりこみ深さは図2の式で表されます。
式よりもぐりこみ深さは屈折率、入射光の波長及び入射角度に依存していることが分かります。
ルート内部に注目すると、角度が大きくなるほど、ルート内部の値は大きくなり、結果としてもぐりこみ深さが浅くなることが分かります。
まとめると以下の表のようになっています。
入射角 | プリズム | 低波数側の測定下限 | n1 | n2 | もぐりこみ深さ(1000 cm−1, n2 = 1.5の場合) |
---|---|---|---|---|---|
65° | Ge | ~700 cm−1 | 4.0 | 3.6 | 0.48 µm |
45° | Ge | ~700 cm−1 | 4.0 | 2.8 | 0.66 µm |
自然酸化膜が生成しているSiウェーハ表面を45度入射ATR及び65度入射ATRを用いて測定しました。
45度入射ATRでは全反射に必要な条件を満たしていないため、スペクトルが著しく歪んでいることが分かります。
一方65度入射ATRではスペクトルに歪みはなくベースラインも平坦です。
65度入射ATRと透過法を用いて測定したスペクトルを示します。
65度入射ATR で取得したスペクトルでは1235 cm−1 近傍に吸収ピークが確認できるだけでなく、C-H吸収に帰属される3000~2800 cm−1 のピークが観測され、表面に僅かに有機物が付着していることも確認できます。
このことより、65度入射ATRを用いることで透過法では確認できない試料最表面の情報を得ることができます。
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