6000~30 cm-1 まで1回で測定できる全真空 FT-IR による多角的分析
FT-IR は、光源・ビームスプリッター・窓板・検出器などの光学素子を交換することで、中赤外領域に加え、可視領域から遠赤外領域までの広い波数 (波長) 領域 (広帯域) で測定できます。中赤外領域では一般的な分子振動情報が得られるのに対し、近赤外領域ではこれらの倍音などに関する情報が、遠赤外領域では結晶状態や分子間の相互作用に関する情報がそれぞれ得られます。したがって、波数拡張した FT-IR システムを用いることで、これらの多角的な情報を取得できますa), b)。
しかし、広帯域のデータを取得する場合、それぞれの波数領域に対応した光学素子を選択する必要があります。さらに、光路上の水蒸気や二酸化炭素の吸収がスペクトルにノイズとして重畳することc) を避けるため、特に遠赤外領域の測定では、窒素パージや光路を真空にする等の対策が必要です。
ここでは、これらの課題を解決すべく開発された、光学系の自動切換機構を備えた全真空 FT-IR と広帯域の測定に対応した光学素子や ATR 付属品を使用することで、近赤外から遠赤外領域をシームレスに測定した事例を紹介します。加えて、水蒸気の影響が顕著な遠赤外領域における無機物の結晶構造を評価した事例も併せて示します。
a) 広帯域KBrビームスプリッタによる赤外、近赤外、FTラマン測定(260-TR-0228)
b) 自動広帯域測定システムを使った広帯域スペクトルの測定(260-AT-0237)
c) 水蒸気や炭酸ガスのノイズを減らすにはどうすればよいでしょうか?(280-SO-0006)