技術情報 アプリケーション Application Data 260-MT-0280
FTIR Application Data

試料形態に応じたダイヤモンドセルの使い方

Introduction

赤外分光法(IR)の測定手法の一つである透過法は、データベースが充実しているため異物の定性分析などで広く用いられていますが、正しく測定するためには試料の表面状態と厚みを適切にコントロールする必要があります。透過測定の前処理には、多くの場合にはミクロトームやスライサーを用いた試料の薄片化や、プレス機器を用いた試料の圧延などを実施します。しかし、これらの前処理には一定以上の習熟が必要とされるため、簡素化したいというニーズがあります。

日本分光では、この前処理を簡素化する手段として DC-500 ダイヤモンドセルを提供しています。このダイヤモンドセルは、ベースプレートと加圧プレートの中心にダイヤモンド窓があり、ベースプレートの窓上に試料を設置した後に、加圧プレートのダイヤモンド窓で挟み、加圧ネジを用いて圧力を加えることで試料の圧延が可能です。ダイヤモンドセルを用いることで、プレス機器を用いることなく試料の透過測定が可能となります。また、このセルは試料の固定や圧延は加圧ネジ2本の操作のみで行うため、習熟度に関係なく簡単に前処理が可能です。ステンレス板とダイヤモンドの間に接着剤を使用していないことから、エタノールやアセトンなどの有機溶媒を使用して簡単にセルを洗浄することもできます。

一般的にダイヤモンドセルを使用する場合には、試料の圧延後に加圧プレート側のダイヤモンド窓を外して測定します。これは、ダイヤモンドを重ねた状態では IR スペクトルに2枚のダイヤモンド窓の隙間によりスペクトルに干渉が表れるためです。しかしながらゴム弾性を有する試料などでは、加圧プレートを外さずに、2枚のダイヤモンド窓を重ねた状態で測定をした方が良い場合もあります。ここでは試料形態を3種類に分類し、それぞれに応じた顕微 FT-IR の測定におけるダイヤモンドセルの使い方とともに、ダイヤモンド1枚と2枚の時を比較した IR スペクトルの違いと、定性分析に与える影響を示します。

Keywords
ダイヤモンドセル、DC-500、異物分析、透過法、前処理、FT-IR、顕微FT-IR
アプリケーションデータ番号
260-MT-0280
発行
2023年
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