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日本分光付属品紹介 高感度多重反射ATR ATR PRO PENTA X

概要

ATR 法は溶液を簡便に測定できる手法として広く利用されていますが、現在主流となっている一回反射型の ATR では数 % オーダーの試料濃度が必要とされるため、生体試料等で要求される 0.1 % 以下の低濃度試料の測定は困難でした。

今回、新しく開発された高感度多重反射 ATR 「ATR PRO PENTA」は、独自の設計による14回反射 Ge プリズム(特許取得済)を採用することにより、0.1 % 以下の低濃度試料を数 µL という微量で測定することが出来ます。

ここでは、この新しい ATR が、脂質、糖類、タンパク質などの生化学分野で、有用なツールであることをご紹介します。

ATR PRO PENTA
ATR PRO PENTA X
14回反射Geプリズム
14回反射Geプリズム
低濃度溶液までカバーする定量性

0.5 %、0.1 %、0.05 % のスクロース水溶液のスペクトルとその検量線を図に示します。各スペクトルは、スクロース水溶液のスペクトルから、水のスペクトルを差し引いた差スペクトルです。濃度と吸光度に非常に高い直線性が得られています。ATR PRO PENTA が、従来では測定不能な低濃度領域でも十分な定量性があることを示唆しています。

※この実験でのスクロース水溶液の定量限界は 0.042 %、検出限界は 0.014 % でした。

各スクロース水溶液のスペクトル
各スクロース水溶液の差スペクトル
スクロース含量の検量線 (1056 cm-1 ピーク高さ)
スクロース含量の検量線 (1056 cm-1 ピーク高さ)
極低濃度サンプルによるIRタンパク質二次構造解析

0.01 % リゾチーム水溶液のスペクトル(水との差スペクトル)を用いて、IR-SSE(IRタンパク質二次構造解析)を行いました。0.01 % という低濃度でもアミドⅠとアミドⅡのピークがはっきり分離し、ピーク形状も明確なため、アミドⅠの情報を二次構造解析に利用できます。重水溶液を用いて測定した差スペクトルの二次構造解析の結果は、Sarver 氏らによって得られた結果と合理的に一致しました[1]。

[1] Sarver, R. W., Krueger, W. C., 1991. Anal. Biochem., 194, 89-100.

※タンパク質は Ge に吸着するため、ある一定濃度より薄いとスペクトル強度が変化しなくなります。
※強酸、強アルカリの測定は出来ません。

0.01%リゾチーム水溶液のATR PRO PENTAでの測定結果と差スペクトル
0.01 % リゾチーム水溶液の ATR PRO PENTA での測定結果と差スペクトル
0.01%リゾチーム重水溶液のSSEスペクトル
0.01 % リゾチーム重水溶液の SSE スペクトル
0.01 % リゾチーム重水溶液の SSE の結果
構造 割合(%)
α-Helix 40
β-Sheet 22
β-Turn 18
Other 20


※ATR PRO PENTA の使用には PV-MCT 検出器が必要です。