技術情報 Web基礎セミナー HPLCの基礎(7) ココが知りたい、HPLCノウハウ ベースライン編
HPLCの基礎

HPLCの基礎(7) ココが知りたい、HPLCノウハウ ベースライン編

クロマトグラムから読み取れるノイズ・ベースライン変動の原因

クロマトグラムにノイズやベースライン変動等のトラブルが発生した場合、まずはその症状から、原因を推察することが重要です。クロマトグラムをよく見て、ノイズの再現性・周期性、トラブル前との相違点などがないかを確認し、頻度・変化の大きさ・変化の方向を考慮して、システムの現状や使用履歴と照らし合わせて原因を究明します。以下に、ノイズとベースライン変動の例を示します。
等間隔のノイズ スパイク状ノイズ ノイズの増大
等間隔のノイズ
スパイク状ノイズ
ノイズの増大
原因例:
・ポンプの脈流
原因例:
・セル内の気泡の通過
原因例:
・セル窓の汚れ・光源の劣化・移動相の吸収・光量の低下
確認方法:
・ポンプの送液を停止させた状態でベースラインを確認
のこぎり状ノイズ 連続的な針状ノイズ 段階状ノイズ
のこぎり状ノイズ
連続的な針状ノイズ
段階状ノイズ
原因例:
・セル内への気泡の滞留
原因例:
・セル内の析出物
原因例:
・光源の劣化(重水素ランプなど)
確認方法:
・ポンプの送液を停止させた状態でベースラインを確認・セル出口側からの溶出液の気泡の出方を確認
蛇行変化 溶媒ピーク付近のベースライン変化
蛇行変化
溶媒ピーク付近のベースライン変化
原因例:
・エアコンなどの室温の周期的な変化
原因例:
・試料溶解溶媒の影響・試料中成分
確認方法:
・エアコンをOFFにしてベースラインを確認・風が検出器に当たらないようにしてベースラインを確認
確認方法:
・移動相のみを注入してベースラインを確認・試料溶液を再調整して再測定・オートサンプラーのバルブ切換のみを実施して確認

脱気装置によるベースライン変動

脱気装置は流路の容量が大きいものがあるため、溶媒の置換に時間がかかったり、脱気槽の陰圧が安定するまでに時間を要するケースがあります。
図1は脱気装置にベースライン変動の要因があることを検証したシステムの例です。同じ溶媒ビンから、脱気装置を通すライン(A)と通さないライン(B)を交互に流すと、脱気装置に変動要因がある場合、図2のように(A)のラインが安定していない結果が得られます。
こういったケースの対策としては、
  • 測定開始の前日から脱気装置の電源をONにしておく
  • 測定開始前に脱気装置内の溶媒を十分に置換しておく
  • といった前準備が有効となります。
    変動要因が脱気装置にある場合のクロマトグラム例
    図2 変動要因が脱気装置にある場合のクロマトグラム例
    脱気装置による変動の検証システム例
    図1 脱気装置による変動の検証システム例

    日常メンテナンスでトラブルを予防

    検出器の光源の劣化はノイズやベースライン変動を引き起こす原因となります。UV検出器やPDA検出器の光源には、重水素ランプとハロゲンランプが用いられていますが、積算点灯時間の目安を超過しているランプでは、ノイズレベルが高くなることがあります。
    光源の交換は装置使用者でも十分に行えるものですので、使用頻度やソフト内のランプ点灯時間、セルを透過した光とセルを透過する前の光の光量の差を参考に定期的にメンテナンスをすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
    重水素ランプ
    図3 重水素ランプ
    セルを透過した光量(SAM)と透過前の光量(REF)の確認画面
    図4 セルを透過した光量(SAM)と透過前の光量(REF)の確認画面
    JASIS新技術説明会 テキスト
    『参考書では教えてくれない基礎講座 ~ベースラインドリフト発生時の対処法~』をダウンロードする
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