近年、カーボンニュートラル社会の実現を目指す取り組みの一環として、建築物の省エネルギー基準が段階的に引き上げられています。建築物の外皮性能については、熱貫流率、日射熱取得率による断熱性能評価が求められるようになりました。建築物全体の中でも、熱を通しやすい窓ガラスの断熱性能の向上は、省エネルギーに大きく寄与するため重要です。こうした中で、窓ガラスフィルムは、比較的低コストで窓ガラスの断熱性能を向上させる手段として注目されています。JIS A 5759:2024 には、JIS R 3106:2019 および JIS R 3107:2019 に基づき、窓ガラスフィルムを貼付したガラスの断熱性能を試験する方法が規定されています1-3)。
ここでは、紫外可視近赤外分光光度計およびフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて、遮熱フィルムを貼付したガラス試験片の透過および反射スペクトルを測定し、現行の規格(2025年6月現在)に対応した日射透過率・反射率測定プログラムによってその日射熱取得率、遮蔽係数および熱貫流率を計算し、性能を評価した例を紹介します*。
* 各パラメーターの意味とイメージについては190-UV-0032を参照してくださいa)。また、遮蔽係数は日射熱取得率と同様の意味を持ちますが、日射熱取得率は日射そのものに対する値であるのに対し、遮蔽係数はフィルムを貼付しないガラスのみの値を1としたときの相対値です。
1) JIS A 5759,建築窓ガラス用フィルム(2024)
2) JIS R 3106 (ISO 9050), 板ガラスの透過率・反射率・放射率の試験方法及び建築用板ガラスの日射熱取得率の算定方法(2019)
3) JIS R 3107(ISO 10292), 建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法(2019)
a) 190-UV-0032B JIS R 3106/ISO 9050 に準拠した遮熱ガラスの評価