水質分析 妥当性評価ガイドライン

妥当性評価ガイドライン

妥当性評価ガイドラインとは

水道水質検査を行う検査機関が、水質基準に係る検査方法(以下「告示法」)や水質管理目標設定項目に係る検査方法(以下「通知法」)による検査を行う にあたり、検査機関ごとに試験環境や分析機器が異なる。
各検査機関が自らの標準作業書に示す検査方法の妥当性について評価する必要がある。
本ガイドラインは、水道水中の無機物、有機物、農薬類等の検査対象物の濃度が、水質基準項目の基準値及び水質管理目標設定項目の目標値(以下「基準値等」に適合 していることの判定(以下「適合判定」)を目的として水質検査を実施する場合に、 検査機関が自らの標準作業書に示す検査方法の妥当性を評価するための手順を示すものである。

妥当性評価の方法

水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン『4. 妥当性評価の方法』では、以下のように記されています。

4-1. 検量線の作成

(1) 濃度範囲

標準試料中の検査対象物の濃度と応答値との間に正の相関関係が見られる濃度範囲内で作成し、添加試料は検量線の濃度範囲内で定量する。

(2) 各濃度点の設定

1本の検量線につきブランク試料を含まない 4点以上の濃度点を設定し、各濃度点はできるだけ均等に配置して特定の濃度範囲に集中しないようにする。また、各濃度点を公比(隣り合う2つの濃度点の濃度比)が原則4以内になるように設定する。

(3) 測定順序と測定回数

標準試料は、最初にブランク試料を測定し、次に低濃度の標準試料から高濃度の標準試料を順番に測定し、最後にブランク試料を測定する。この一連の測定を繰り返し、各濃度の標準試料の測定データを3個以上取得する。

(4) 回帰式の算出方法

検量線の回帰式にはできるだけ直線回帰モデルを用いる。各濃度点の重み付けを行ってもよい。なお、回帰式は原点を強制的に通過させず、原則としてブランク試料を含めずに応答値が得られた濃度の標準試料のみを用いて算出する。

(2) 各濃度点の設定
正しい検量線作成時の濃度点の設定例
間違った検量線作成時の濃度点の設定例
(3) 測手順序と測定回数
検量線作成時の測手順序と測定回数

4-2. 検量線の評価

(1) キャリーオーバー

最高濃度の標準試料の測定後に測定したブランク試料中の検査対象物の濃度が、検量線の濃度範囲の下限値を下回ることを確認する。

(2) 真度

標準試料を繰り返し測定し、各濃度の標準試料を検量線により定量した濃度の平均値が、いずれの濃度点においても調製濃度の80%から120%であることを確認する。

(3) 精度

標準試料を繰り返し測定し、各濃度の標準試料を検量線により定量した濃度の相対標準偏差 (RSD) が、いずれの濃度点においても20%以下であること。ただし、「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」(平成15年10月10日健水発第1010001号。以下単に「通知」という。)において変動係数(併行精度)の目標が10%以下と定められている項目においては、いずれの濃度点においても相対標準偏差(RSD)が10%以下であることを確認する。

(1) キャリーオーバー
検量線評価時のキャリーオーバーの確認方法
(2) 真度
検量線評価時の真度の確認方法

4-3. 添加試料の調製

(1) 添加を行う水

添加を行う水は、原則として検査対象物を含まない水道水とする。検査対象物が水道水の常在成分である場合等には、以下に示すいずれかの方法により評価を行う。
①添加試料の試験結果から添加前の試料の試験結果を差し引いて評価する。この場合、併行条件以下とみなせる範囲において、それぞれ1個以上のデータを取得し、その試験結果の平均値を差し引く。
②定量下限における評価は精製水又はミネラルウォーター等を用いる。ただし、この場合でも、水道水を用いて常在成分の影響がないとみなせる濃度で妥当性を評価する必要がある。

(2) 添加濃度

添加濃度は原則として定量下限を含む1種類以上とする。硬度やフェノール類のように、複数の成分を合算して評価する項目の場合は、各成分が基準値等の1/10(農薬類の場合は原則として目標値の1/100)以下の濃度になるように定量下限を設定する。

(3) 添加方法

標準検査方法において採水時に添加することが定められている試薬を添加した後に、できるだけ少量の検査対象物の標準液を添加する。精製水に添加を行う場合であっても、上記の試薬を添加してから検査対象物を添加する。
複数の検査日にわたって試験を行う場合、標準検査方法で規定されている試料の保存期限を超えないように添加試料を調製する。なお、試料調製を複数回行う場合、評価期間内に大きな水質変動がある場合を除き、同一とみなせる試料と解釈してよい。

4-4. 添加試料の評価

添加試料を自らの標準作業書に基づく検査方法に従って試験し、その結果から 4(1)~(4)に示す性能パラメータを求め、それぞれの目標に適合していることを確認する。標準検査方法を新たに検査室へ導入する場合及び妥当性評価された検査方法の一部を変更する場合は、室内精度を除く性能パラメータを確認する。ただし、定量下限が高くならないと判断できる場合は、添加試料の濃度を定量下限としなくてもよい。標準検査方法以外の検査方法を検査室に導入する場合は、全ての性能パラメータを確認する。それぞれの場合において評価すべき項目を表1に示す。

(1) 選択性

ピークを出力する機器の場合は、原則として検査対象物を含まない水道水等を自らの標準作業書に基づく検査方法に従って試験し、定量を妨害するピークがないことを確認する。妨害ピークを認める場合は、できるだけ検査対象物のピークと妨害ピークを分離できる測定条件を設定する。

表1 評価すべき項目の一覧

選択性

真度

併行精度

室内制度

1

標準検査方法を新たに検査室へ導入する場合

2

妥当性評価された検査方法の一部を変更する場合

*1

*1

*1

3

標準検査方法以外の検査方法を検査室に導入する場合

*1 定量下限が高くならないと判断できる場合は、添加濃度を定量下限としなくてもよい

(2) 真度

5個以上の添加試料を検査方法に従って試験し、得られた試験結果の平均値の添加濃度に対する比を求め、表2の目標を満たすことを確認する。

(3) 併行精度

添加試料を検査方法に従って複数回試験し、得られた試験結果の併行精度(RSD)が表2の目標を満たすことを確認する。自由度が4以上となるように試験を行う。

(4) 室内精度

添加試料を検査方法に従って複数の検査員又は検査日により複数回試験し、得られた試験結果の室内精度(RSD)が表2の目標を満たすことを確認する。自由度が4以上となるように試験を行う。

表2 真度及び精度の目標

項目

真度(%)

併行精度(RSD%)

室内精度(RSD%)

無機物*1

70~130

≦ 10

≦ 15

有機物*2

70~130

≦ 20

≦ 25

農薬類

70~130

≦ 30

≦ 35

*1 通知において変動係数の目標が10%以下に定められている項目

*2 通知において変動係数の目標が20%以下に定められている項目

妥当性評価ガイドライン適用例 -シアン化物イオン及び塩化シアン分析-

検量線の評価
☑ キャリーオーバー ☑ 真度 ☑ 精度
シアン化物イオンの検量線の真度・精度
ピーク面積
濃度(µg/L) 1 2 3 Ave SD RSD% 定量値
(µg/L)
真度(%)
0.5 3280 3275 3253 3269 14.4 0.439 0.50 100.3
1 7077 7056 6989 7041 46.0 0.653 1.06 105.5
2 13343 13344 13148 13278 112.9 0.850 1.97 98.5
5 33585 33538 33635 33586 48.5 0.144 4.95 99.0
10 68910 67698 68061 68223 622.0 0.912 10.03 100.3
a(傾き) 6819
b(切片) -151.3
r(相関係数) 0.99994
塩化シアンの検量線の真度・精度
ピーク面積
濃度(µg/L) 1 2 3 Ave SD RSD% 定量値
(µg/L)
真度(%)
0.5 2593 2641 2543 2592 49.0 1.890 0.50 99.5
1 5939 6030 5698 5889 171.6 2.913 1.04 104.3
2 11265 11471 11370 11369 103.0 0.906 1.95 97.5
5 29754 29639 30234 29876 315.6 1.056 5.01 100.2
10 61225 59425 59507 60052 1016.4 1.693 10.00 100.0
a(傾き) 6046
b(切片) -414.8
r(相関係数) 0.99996
シアン化物イオンの検量線
シアン化物イオンの検量線
塩化シアンの検量線
塩化シアンの検量線
高濃度試料 (10 µg/L) 測定後のブランク測定結果
(キャリーオーバー)
定量値(µg/L)
CN- CNCl
1 N.D. N.D.
2 N.D. N.D.
3 N.D. N.D.
添加試料の評価
☑ 選択性 ☑ 真度 ☑ 併行精度 ☑ (室内精度)
シアン化物イオン添加試験の真度・併行精度 (N=5)
水道水
(µg/L)
水道水 +
0.5 µg/L(µg/L)
回収率
(%)
水道水 +
5 µg/L(µg/L)
回収率
(%)
1 N.D. 0.529 105.85 5.028 100.56
2 0.540 108.07 5.027 100.53
3 0.536 107.23 5.053 101.07
4 0.543 108.51 5.133 102.66
5 0.511 102.10 5.109 102.19
Ave 0.532 106.35 5.070 101.40
SD 0.01 2.58 0.05 0.97
RSD% 2.430 2.430 0.959 0.959
塩化シアン添加試験の真度・併行精度 (N=5)
水道水
(µg/L)
水道水 +
0.5 µg/L(µg/L)
回収率
(%)
水道水 +
5 µg/L(µg/L)
回収率
(%)
1 N.D. 0.514 102.71 4.811 96.22
2 0.519 101.98 4.821 96.42
3 0.492 98.32 4.893 97.86
4 0.493 98.52 5.039 100.78
5 0.484 96.82 4.938 98.76
Ave 0.498 99.67 4.900 98.01
SD 0.01 2.54 0.09 1.87
RSD% 2.549 2.549 1.910 1.910
水道水への添加回収試験時のクロマトグラム(1:CN-、2:CNCl)