技術情報 Web基礎セミナー ORD・CDの基礎(1) ORD、CD測定の原理
ORD・CDの基礎

ORD・CDの基礎(1) ORD(Optical Rotatory Dispersion)、CD(Circular Dichroism)測定の原理

偏光について

光が電磁波であることは、紫外可視分光光度計の基礎(1) 光の性質で述べた通りです。電磁波は、直行する電場と磁場中を進行方向に垂直に振動して伝わる横波です。自然界の光には、様々な向きに振動する光の成分が含まれています。これに対し、振動面がそろった光が直線偏光(図1上)、光の波の進行に伴い振動面が回転する偏光が円偏光です(図1下)。
直線偏光、円偏光
図1-1 直線偏光(上)、円偏光(下)
直線偏光 円偏光
図1-2 直線偏光(上)、円偏光(下)*
直線偏光は、結晶軸や分子の向きが揃った光学素子(偏光子)に光を通過させることで得られます。円偏光は、直行する波のベクトル(電場ベクトル)の位相が1/4波長ずれたときに生じます。円偏光には左回り円偏光(El)と右回り円偏光(Er)とがあり、直線偏光は計算上、強度の等しいElとErの和と考えることができます(図2上)。強度が異なる場合のElとErの和が楕円偏光です(図2下)。
円偏光の合成
図2-1 円偏光の合成〜直線偏光(上)
楕円偏光(下)
円偏光の合成
図2-2 円偏光の合成〜直線偏光*

旋光性とORD測定の原理

光学活性物質は、L体、D体という鏡像関係の異性体を持つ物質です。サリドマイドやグリセルアルデヒドなどがその例です。光学活性物質は、直線偏光の偏光面を回転させる性質、旋光性(OR)を持ち、その波長依存性を旋光分散(optical rotatory dispersion: ORD)と呼びます。図3で、Y軸方向の直線偏光が左側に回転するものをlevo(l)または(−)旋光性(左旋性)といい、右側に回転するものを、dextro(d)または(+)旋光性(右旋性)といいます。ここで回転角αが旋光角、+または−により回転方向を表します。
旋光分散と旋光角
図3 旋光分散と旋光角(α)

CD測定の原理

円二色性(circular dichroism: CD)は、光学活性物質の吸収波長領域において、左右円偏光の吸収の度合が異なる現象です。CD測定は、光学活性な試料に左右の円偏光を通すことで、それらの吸収の差を検出します。左右の円偏光の吸収の差により透過光は楕円偏光となり、この不等吸収の現象を円二色性(CD)と呼び、楕円率θで表します(図4)。 この楕円率の波長依存性をプロットしたものを円二色性スペクトル( CD スペクトル)と呼びます。
円偏光の不等吸収
図4-1 円偏光の不等吸収
円偏光の不等吸収 円偏光の不等吸収
図4-2 円偏光の不等吸収*
*http://cddemo.szialab.org/ by Dr. Andras Szilagyi より許可を得て転載
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