技術情報 Web基礎セミナー 蛍光光度計の基礎(4) 分光蛍光光度計 ハードウェアの特徴と役割
分光蛍光光度計の基礎

蛍光光度計の基礎(4) 分光蛍光光度計 ハードウェアの特徴と役割

分光蛍光光度計の構成

分光蛍光光度計の光学系の例を図1に示します。光源からの光は励起側モノクロメーターにおいて回折格子で単色光に分光され、分光された単色光のうち目的の波長の光がスリットを通すことで取り出されます。この光はビームスプリッターで光源の光エネルギーの変動をモニターするための成分と試料に照射する成分に分けられます。
試料が発した蛍光は蛍光側モノクロメーターで分光され、各波長における蛍光強度がスペクトルとして得られます。
分光蛍光光度計の光学系
図1 分光蛍光光度計の光学系の一例
蛍光強度の値は、蛍光側の検出器の値をそのまま用いるのではなく、励起光強度で割り算した値を用います。これを比演算方式といい、
  • 光源のふらつきのキャンセル
  • 光源、励起側分光器の波長特性のキャンセル
  • S/Nの向上
という利点があります。

分光蛍光光度計を構成するパーツ(回折格子、検出器)に関しては、紫外可視分光光度計の基礎(4)をご参照ください。
以下では、分光蛍光光度計に特徴的な付属品、消耗品について説明します。

光源

分光蛍光光度計ではキセノンランプが主に使用されます。キセノンランプは紫外領域から近赤外領域に強いエネルギーを持ち、高感度な測定を実現します。

分光蛍光光度計のセル

試料からの蛍光は全方位に放射されますが、分光蛍光光度計の場合、90度方向で検出する側面測光方式が一般的に採用されています。そのため、分光蛍光光度計のセルは四面透過セルを用います。しかし、高濃度な試料溶液の場合、四面透過セル内部まで励起光が到達しないため、表面蛍光を測定することになります。このとき励起光が検知器に直接入るのを防ぐため、入射角を30度にすることや、三角セルを使用することが必要となります。
セルの材質には、ホウケイ酸ガラスと石英ガラスがありますが,ホウケイ酸ガラスは,紫外光を吸収するため、紫外光を励起光とすることが多い蛍光分析で利用されることは稀です。また,石英ガラスにも石英ガラス,合成石英ガラスに加え,無蛍光石英ガラスがあり,後者になるほど石英に含まれる不純物が少ないため,セルに含まれている不純物由来の蛍光を軽減させたい場合には,無蛍光石英ガラスを使用することを推奨します。
四面透過セル、三角セル
図2 四面透過セル(左)と三角セル(右)
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