技術情報 Web基礎セミナー 紫外可視分光光度計の基礎(4) 紫外可視分光光度計、ハードウェアの特徴と役割
紫外可視分光光度計の基礎

紫外可視分光光度計の基礎(4) 紫外可視分光光度計、ハードウェアの特徴と役割

紫外可視分光光度計の構成

図1は紫外可視分光光度計の光学系の一例です。光源ランプの光を回折格子で分光します。分光して得られた虹をスリットに通すことで特定波長の光を取り出します。この単色光をビームスプリッタで2つに分け、それぞれを試料とリファレンスに通します。こうして、試料・リファレンスを通過した光を検出、信号処理します。光の強さをデジタル変換し、吸光度やスペクトルデータを得ます。以下、紫外可視分光光度計を構成するパーツについて説明します。
紫外可視分光光度計の光学系
図1 紫外可視分光光度計の光学系の例
WI: ハロゲンランプ、D2: 重水素ランプ、G: 回折格子、M: ミラー、BS: ビームスプリッタ、D: 検出器、Sam: 試料光束、Ref: 対照光束

光源ランプ

紫外可視分光光度計の光源ランプとしては、紫外領域用に重水素ランプ(185~400nm)、可視・近赤外領域用にハロゲンランプ(350~3000nm)を使用します。長時間安定で、高輝度、エネルギー分布が平坦な光源ランプが採用されます。
HPLCで使用されるフォトダイオードアレイ(PDA)検出器の中には、短時間にスペクトルを測定するため、発光時間が短く発熱量が少ない高輝度のキセノンフラッシュランプ(185~2000nm)を使用したものもあります。
紫外可視分光光度計の光源ランプ
図2 重水素ランプ(左上)、ハロゲンランプ(右上)、キセノンランプ(下)

回折格子

コンパクトディスクに光を当てたときに生じる虹色の光や、回折格子による分光の原理は、光の回折による現象です。
回折とは、小さな隙間を波が通る際に、隙間の隅で波が曲げられる現象です。海から港の入口で波が半円状に広がる現象がありますが、これも回折の一例(図3)です。光の場合も波と同様で、小さな隙間から光が通る場合や、小さな穴(溝)の開いた基板から光が反射する際、回折が起こります。
図4に示すように、基板の隙間で進行方向を変えた光は、同じ波長の光でも位相(強弱の周期)のズレを起こします。図4の場合、dsinθだけズレが生じるので、dsinθ=nλに一致する(周期が一致する)場合のみ強め合いが起こり、一致しない場合は弱め合って消失します。回折する角度によって強め合う波長が決まるので、光を波長ごとに分けることができます。光は同一の波長同士では、干渉という現象を生じます。これは、完全に弱めあう干渉、完全に強めあう干渉、位相を180°ずらした波などに分類できます。
回折現象
図3 回折現象
回折格子と回折
図4 回折格子と回折
干渉の効果
図5 干渉波の強め合い・弱め合い(緑線が合成後の波)

検出器

紫外可視分光光度計の検出器は、検出器面に照射された光の電磁気的エネルギーを電流、電圧に変えるものです。
代表的なものに、190~1100nmで強い感度を示すSiフォトダイオード検出器、1000~3200nmの広い波長域に感度を示すPbS検出器、900~1800nmに強い感度を示すInGaAs検出器、185~900nmに強い感度を示す光電子増倍管(PMT)があります。
PMTは特に高感度です。光電面に光が当たると、真空中に光電子が放出し、集束電極によって電子増倍部に導かれます。電子増倍部で生じる2次電子放出効果によって光電子を増倍し、100万倍~1000万倍に増幅することができます(図7)。
紫外可視分光光度計の検出器
図6 Siフォトダイオード(左上)、Pbs(右上)、InGaAs(左下)、光電子増倍管(右下)
光電子増倍管
図7 光電子増倍管のしくみ
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